ファッション豆知識

トレーナー(スウェットシャツ)(3)

前回、トレーナー(スウェットシャツ)はシンプルなデザインなのに、様ざまな機能があるということをお話ししました。
今回は、トレーナーのファッション的な魅力を追ってみたいと思います。

トレーナーは、着心地の良さや耐久性だけでなく、その彩豊かなプリントデザイン(グラフィック)も魅力ですよね。
トレーナーやTシャツを選ぶ際には、このプリントのデザインも重要なポイントです。

今では当たり前のプリントですが、コットン製のスウェットシャツが誕生した当時の技術では、プリント時の色ムラや洗濯による色落ちなど問題が多かったそうです。
これまで様ざまなプリント方法が採用されてきましたが、ヴィンテージ・スウェットシャツ愛好家は、プリントを見て、そのアイテムが作られた年代がわかるとか。この辺も掘り下げると面白そうですね。

なかなか難しいプリント技術ですが、コットン製のスウェットシャツの原型を生んだラッセル・アスレチック・カンパニー(「トレーナー(スウェットシャツ)(1)」参照)が、1938年に「ラス・プリント」という技術を開発します。ラス・プリントは、特殊な塗料(企業秘密)を使い、350度の高温でプリントして約1分乾かすだけで、その後洗濯や乾燥を何度繰り返しても色あせず、運動などの激しい摩擦にも負けない抜群の耐久性を持つ画期的なプリント技術で、この技術でプリントされたスウェットシャツが発売された当時のキャッチコピーが、「たとえウェアは擦り切れても、ラス・プリントだけは残る」なのだそう。 その後ラス・プリントは、全米の高校や大学のユニフォームなどに採用され、ロゴが入ったスウェットシャツの世界的な普及に一役買いました。

大学名がプリントされた「カレッジ・スウェットシャツ(College sweatshirts)」については、「パーカー(2)」でも触れましたが、ここ数年、昭和レトロブームの一環でしょうか、日本でも再び流行していますよね。

カレッジ・スウェットシャツは、チャンピオンが1924年にミシガン大学と提携し、スポーツ部のトレーニング・ウェアとして開発したのが原型と言われています。これが大学の生協で販売されると、スポーツ部ではない一般学生の間でも普段着として人気が広がり、1930年代にはアメリカの多くの大学でこの「カレッジ・スウェットシャツ」が流行し、これが「プリントTシャツの始まり」にもなりました。(「Tシャツ」参照)

その後1960年代から70年代にかけては、アメリカだけでなくイギリスなど他国でも多くの大学が、フーディーも含んだカレッジ・スウェットシャツを作り、世界中で大流行したのです。

スウェットシャツにプリントされるものが、大学名ではなく高級ブランド名だと、セレブ感が増してカジュアル感も抑えられ、「大人のオシャレ」として着ていく先も増えそうです。「Ralph Lauren (ラルフ・ローレン)」のスウェットシャツは、定番といってよいほど人気なのだそう。合わせるボトムをドレッシーにすれば、ちょっとしたパーティーに着て行ってもよいかもしれません。

もちろん、「NIKE(ナイキ)」などスポーツウェア・ブランドのものも人気ですし、老舗の「Champion(チャンピオン)」のように、ワンポイント刺繍でメーカーのロゴが入っているものも多く見かけます。その他、チーム名や企業名など様ざまなロゴのスウェットシャツが作られています。

また、Tシャツと同様スウェットシャツも、強いメッセージがプリントされたり、アートを表現したり、時として、発信力を持ったメディア的なアイテムにもなっています。 最近はプリント技術がどんどん進化して簡易になり、個人でオリジナルのものを作る人も増えました。街を歩いていると、思わず目を留めてしまうような面白いデザインもあって、スウェットシャツ・ウォッチングもなかなか楽しいものです。

季節を問わず着られるトレーナー(スウェットシャツ)。
薄手のものもありますが、少し厚手の立体感のあるものの方がシルエットがきれいでオシャレです。

ビッグシルエットの厚手のトレーナーを、細身のボトムに合わせてバランス良く着ると着痩せ効果抜群ですが、1枚でワンピースのように着るのも可愛いですね。

また、厚手のものは怪我防止にもなるので、軽いアウトドア用ウェアとして着られたり、軽作業用の作業着としても用いられることもあります。

ちなみに、トレーナー(スウェットシャツ)の厚さを表す際は「Ounce(オンス)=OZ」というアメリカの単位で表されることが多いと思いますが、これはヤード・ポンド法で重さを表す単位です。ボクシング好きな人なら、グローブの重さの単位としても使われていますのでご存知かもしれませんが、メートル法が一般的な日本ではあまり馴染みがないかもしれませんね。
トレーナーやTシャツに表記される場合は、1m×1mの面積(1平方メートル)や、1ヤード×1ヤードの面積(1平方ヤード)に対する生地の重さを表します。
1OZは約28.35gで、トレーナーやパーカーの場合、だいたい9~13OZのものが多いようですが、生地が特に厚いものは15OZ以上になるそうです。

ただし、素材や生地の編み方や糸の太さによって生地の厚みは大きく左右されるので、同じ重さ(OZ)であっても厚みがまったく異なるケースもあります。例えば、コットン生地は重いので、同じOZでも化学繊維のものに比べると薄くなります。
ですので、OZの数値は、同じような商品の中で比較する際に参考にする目安として確認した方が良いでしょう。

次回はトレーナー(スウェットシャツ)のコーディネートなどについて、お話ししたいと思います。お楽しみに!

文/佐藤 かやの(フリーライター)

写真はイメ―ジです。