彫刻を学ぶということ。
形はどのようにして生まれ、決定されていくのでしょうか。植物や動物など自然の物は、生きるための機能から生じた形を持っています。デザインされた物や芸術作品といった人工的な物も、作者個人にとどまらず、社会・文化など共同体の思考をも反映し、やはりそれでなければならなかったという形をしています。
しかし、形の背後にある多くの情報や、そのものが抱えている記憶は、見ようとしなければ見えてこないものかもしれません。彫刻を学ぶことは、形がどのようにして決定されていくのかをあらためて見つめ、そこから自分が何を受け取っているのかを知ることに繫がっています。
彫刻コースでは、自身の表現を探究する前に、粘土を使った塑像制作と木彫制作を通して、造形の基礎的な技術を習得します。
塑像は基本的に、作品の中心から表面へ向かって量を付け足していく方法です。一方で木彫は、作品の中心に向かって量を削っていく方法です。
対照的とも言える、これら二つの方法を軸に彫刻を考えます。また、その技術の前提となる、物の形や構造を的確に捉える力を養うために、デッサンを通じて人体など身近な物をよく観察することも重要だと考えています。
彫刻の制作では、人体であれば頭部など部分的なパーツから始め、半身像、全身像というように難易度を上げながら技法を学んでいきます。
彫刻コースには金曜日・土曜日の2日間で学べる「週2日通学」もあります。
大型の立体作品などは、制作工程が長い上、途中での移動が難しいため、作業場所を固定しておく必要があります。そのため工房制という方式で行い、3学科が同じ工房で学びます。題材は共通としながらも、それぞれの学科の課題に応じて技術の学びを深めていきます。
この授業では、モデルを観察し、人間の身体の骨格や筋肉の構造を理解しながら制作に取り組みます。たとえば造形表現科の立像制作では、全身の形を統一的に捉えながら、「立つ」という、体が重力に抵抗する力のあり方や、それを塑像でいかに構築するかという点から人体について考えます。
粘土でつくった塑像作品はそのままでは壊れやすく保管できないため、塑像を制作した後に石膏で型取りして、粘土から石膏の像に置き換える技術を学びます。塑像の制作工程では、外側の形しか見ることができませんが、型取りの工程では、粘土を抜き取った後の作品内側の形を見ることができます。粘土のポジティブな塊があったところが反転し、同じ分量のネガティブな空間を見ることになります。この経験は、物体と空間の関係について認識を深めることになるでしょう。
針金やガラスなどを用いた授業で、はんだ付けの技術が習得できます。線材を用いて立体をつくることにより、輪郭線で把握する平面的な見方から、空間を意識した立体的な見方が自然にできるように導いていきます。
製材された樟から、鑿(ノミ)、鋸(ノコギリ)などの道具を使って形を削り出していきます。自然の一部である木に触れ、木材の特徴を生かした作品制作を目指します。初めて彫刻をつくる方でも、今までの経験を立脚点にした作品制作ができるように、木彫課題は自由なテーマで制作しています。
粘土、木、金属、ガラス、テラコッタ、針金など。材料・道具は学校で一括購入をし、販売をしているものもあります。
床面積104㎡の工房
防音・防塵対策/陶芸窯/等身大全身像などの大作の制作が可能/チェーンソーや鋸など共有備品あり。
ロッカー完備、作品保管スペース有。
初めて彫刻をつくる方を対象にしたカリキュラムを組んでいます。人間をモチーフにした塑像では、全身ではなく、興味のあるパーツを部分的につくってみることから始めます。モデルの体を観察する中で、凹凸の深さ、有機的な形のつながり、人間の体の構造などを学ぶことを目標としています。
また、彫刻の技術的な面を学ぶには、道具の扱い方を覚える必要があります。教室で扱うことのできるさまざま
な素材や道具に触れ、その使い方を習得し、次年度に繋げることができるよう指導していきます。
塑像の基礎を習得している方を対象にしたカリキュラムを組んでいます。美術表現科と同時期に同じ素材で制作しますが、より複雑な造形力を習得することを目指します。たとえば人体塑像の課題では、全身像に取り組みます。
全身像は、立つ、座るなどの姿勢、体の内部の動勢を捉え、作者が再構築していく力が必要になります。これにより、自主的な制作においても、作品の構成を積極的に構築する力が身に付きます。
学生自身が探究したい課題を見つけ、自主的に制作を進めます。学生のより個別な制作に寄り添った指導をしていきます。
また、美術表現科・造形表現科の学生と同じ教室での制作になります。他の学生のアイデアや制作方法に接することによる相互の学びは、一人で行う制作では得られない貴重な経験となることでしょう。
下記は一例となります。
良かったこと、大変だったこと
定年後アートをやりたいと思い、学校に見学に行ったところ彫刻の教室を初めて見ました。彫刻はやった事が無かったし、やれる機会も場所も他にないと思い当校の彫刻コースに入学しました。
表現研究科/山下雅己さん