版画コース

版を通して
自身の絵を探る。

ものをつくる、かたちを描く、美術はなにかを伝えるために生まれました。やがてそこには様々な技術と方法が備わり表現としての作品が育ちます。自身の思うように描いてゆく直接技法の絵画とは異なり間接技法の版画には素材と工程が介在することで思いがけない絵が現れることがあります。版画には、これまでの経験では出会えなかった絵の表情や発見が待っています。

伝統的な版表現技法である「銅版画」「木版画」「リトグラフ」の3版種を様々な技法や異なるサイズで1年間を通して学び、自身の表現に合った制作につなげていきます。

書籍や印刷と近しい出自を持つ版画作品は美術作品としてだけではなく、絵本や装丁・挿絵などへの展開につながることも多く、新たな制作と発表の可能性が広がることでしょう。

版画コースでは、「全国大学版画展」へ参加をしています。この展覧会は全国の美術大学・大学院から選抜された作品が集まる、年に一度の成果を問う重要で貴重な機会となっています。また、年に2回、4日制2日制合同講評会を行い、本校で版画を学ぶ学生がそれぞれその作品や制作姿勢から学びあう機会も設けています。

版画コースには金曜日・土曜日の2日間で学べる「週2日通学」もあります。

版画コースの学びについて

工房制

版画制作にはプレス機、腐蝕製版設備などを擁した工房が必要となります。そのため工房制での授業となります。

3学科の異なる経験の学生が同じ工房で、課題や研究に応じた制作に取り組みます。技術の向上も必要ですが、重要なことは共同の工房制作の中で見えてくる他者と自身の考え方や作品の捉え方の相違です。そのような経験を積む機会としての工房でありたいと考えています。

銅版画

タブレットでドローイングするようになった現代、それに歯向かうように、手を汚しながら仕上げていく銅版画は、「つくる」という感覚を強烈に実感出来ます。反面、その技法とテクスチャーにより画面は魅力となりますが、それだけでは表現には至りません。

魅力あふれる技法に溺れることなく、それを使い描き、それぞれの世界・イメージの確立を目指します。

木版画

最も古い版画形式である木版画は多色浮世絵版画として内外に広く知られています。伝統技法に加えて現代の版画作家たちが考案し試行してきた表現技法を自身の作品に活かした制作を目指していきます。

現代の技法により水性木版画ならではの紙を染める美しい色彩と描くような自在な表現、従来の木版画では表現できなかった絵画的な表情を持つ木版画が得られます。

リトグラフ

「平版」とも呼ばれ平らな版の上に描いたものがそのまま印刷できることから、多くの芸術家たちが表現方法として活用してきました。油性インクの色彩の重なりは作り手の絵画世界を見事に表現してくれます。

また写真などを活用した版表現も可能です。リトグラフを通して描くことを根本から考え、制作工程によって作品を構造的に見つめる機会を得ることでしょう。

技法

銅版画/木版画/リトグラフ。

基本的なインクや紙は学内で販売しています。

施設

銅版画プレス機2台(170×80cm、90×45cm)

リトグラフプレス機3台(74×62cm、70×55cm、105×75cm)

制作用机14台(180×90cm)

腐蝕室/シャーリング/大型アクアチントボックス/マップケース8台

学科ごとの学習領域

美術表現科と造形表現科

さまざまな描画材と異なる紙を用い自身の絵を探るドローイングを4月の授業開始から行います。次に、午前午後を通して美術大学版画科同様のカリキュラム(1版種4週間)の集中講座に取り組みます。リトグラフ・銅版画・木版画の3版種を順に学び、基礎を習熟していきます。未経験の版種に触れることで新たな発見を得られることも多くありますので、既に版画経験のある方にも同様の授業を行います。

後期からは自身の表現に合う版種でより高度な技法を探る自主制作を行います。自由に版種を選択しての制作、異なる版種を並行しながらの制作、複数版種の併用制作も出来ます。

また、版画技法での作品だけではなく紙媒体のコラージュという技法を用いて制作を展開させていきます。作品制作だけでなく、アーティストブック、ポートフォリオ制作、発表の為の様々な額装方法を指導します。

表現研究科

版画制作の基礎を経験し習得された方や専門版種を深く研究したい方には個々の制作計画を組みます。また美術・造形表現科同様に年間を通して作品に合わせた版種を自由に選択して制作することが出来ます。

自身の作品をどのように進めるのか、なにを描きたいのか、どのような表現技法が完成度を上げるのかという制作命題を探ります。作家独自の技術技法指導、個展開催や版画コンクール出品に向けての制作アドバイスなど、それぞれに応じた指導をしていきます。

カリキュラム

下記は一例となります。

春季

  • ドローイング・リトグラフ
  • スペースCTCにてコース展覧会開催

夏季

  • 銅版画・木版画
  • 4日制・2日制合同講評会

秋季

  • 版画によるコラージュ
  • 選択版種による制作

冬季

  • 全国大学版画展
  • 4日制・2日制合同講評会
  • 修了制作

学生の声VOICE

入学を検討中の方へメッセージ

質の高い教員陣は、ひとりひとりに丁寧に専門的知識を指導してくださいます。個性的で多様な価値観を持つ人が集う環境なので、スキルや発想を磨くことができます。存分に創作に打ち込める充実の設備で楽しく自己表現を制作できる環境が魅力です。

表現研究科/わたなべ淑子さん

先生よりメッセージ

木村繁之

版画家

版画工房では銅版画、リトグラフ、木版画の各版種担当教員三名により基礎からお教えしますので、それぞれの版種を並行して制作することが出来ます。版画は印刷ではありません。版という手段と材料を用いて絵を描いてゆきます。未だ見ぬ自身の絵を探りましょう。

今井庸介

銅版画家

「あなたのアイデア・ひらめき」を大切に、そして冷徹に接していきましょう。日頃の思いつきを全て記録するノートを作ることをおすすめします。

近藤英樹

美術家

版画制作のプロセスの中にはまだまだ未知の可能性が秘められています。掘り下げながら楽しんで制作しましょう。

授業の様子