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ファッション豆知識

トレーナー(スウェットシャツ)(2)

前回「トレーナー」という呼称は「スウェットシャツ」の日本独自の呼び方だというお話をしました。
また、もともとは伸縮性の高いメリヤス生地のスポーツウェアだということで、混同しやすいアイテムである「ジャージー」との違いのお話もしましたが、ここでは「トレーナー」というアイテムについて、もう少しお話したいと思います。

新・田中千代服飾事典の「トレーナー」の項をあらためて確認してみましょう。

トレーナー 【Trainer】

裏起毛または裏パイルのコットン・ジャージーなど吸湿性のよい素材でつくられ、ラウンド・ネック、ラグラン・スリーブ、袖口と裾のゴム編などを特徴にした、プルオーバー式を代表とするシャツ。日本で親しまれているよび名で、スウェット・シャツ、トレーニング・シャツともよばれる。

事典によるとトレーナーの特徴は、
・ 素材はコットン・ジャージーなど吸湿性のよいもの
・ 裏地は裏起毛または裏パイルになっている
・ プルオーバー式シャツ
・ 首周りはラウンド・ネック、袖はラグラン・スリーブになっている
・ 袖口と裾がゴム編みになっている

とあります。
トレーナー(スウェットシャツ)の元は、スポーツのトレーニング・ウェアとして開発されたプルオーバー式のシャツで、素材がコットンになった経緯とジャージーという生地に関しても、前回お話しましたね。

今回はそれ以外のトレーナーの特徴について、みていきたいと思います。

トレーナーは、首周りはラウンド・ネック、袖はラグラン・スリーブになっていて、袖口と裾がリブ(ゴム編み)になっているものが基本形です。

「ラウンド・ネック」と「リブ」はみなさんご存知かと思いますが、「ラグラン・スリーブ」というのはどんな袖のことか説明できる人は案外多くないかもしれません。

ラグラン・スリーブは、ぐりから袖下にかけて斜めの切替線のはいった袖で、普通の袖に比べてゆとりがあるので着脱しやすく、動きやすいのが特徴です。
「ラグラン」という名は、クリミア戦争時、イギリスの司令官ラグラン伯爵が戦地で、負傷者でも楽に着脱できるような衣服を考案したことが由来なのだそう。納得の由来ですね。

ラグラン・スリーブ 【Raglan sleeve】

衿ぐりから袖下にかけて斜めの切替線のはいった袖。また切替線が衿ぐりからではなく、肩の途中からでたものを<セミ・ラグラン・スリーブ>という。普通は袖にくらべゆとりが多く、コートやスポーツウェアに用いられることが多い。

ラグラン・スリーブ 【Raglan sleeve】 

(スリーブ 【Sleeve】の項)


衿ぐりから袖下にかけて斜めの切替線のはいった袖。形はいろいろくふうされ、変形されたものがあり、一枚袖、二枚袖、三枚袖になっているものなどがある。また切替線が衿ぐりからではなく、肩の途中からでたものをセミ・ラグラン・スリーブという。この名はクリミア戦争のとき、イギリスの司令官ラグラン伯爵が戦地で負傷者が楽に着脱できるような衣服を考案したことがおこりといわれている。スリーブを略してたんにラグランという場合は、とくにラグラン・スリーブになったオーバーコートをいう。

ちなみに、ヴィンテージ・スウェットは袖口のリブ部分が長く、「長リブ」「リブ長」「ロング・リブ」などと呼ばれているそうです。一般的に、リブが長ければ長いほど古いものであると言われています。

首元に、V字状、逆三角形のような部分があるトレーナーもよく見かけます。
これは「Vガゼット」と呼ばれるもので、デザインの一部のように見えますが、実は「伸縮性の向上による補強」「汗止め」といった目的を持った機能として付けられたディテールです。

日本では「ガゼット」と表記されていますが、「Gusset(ガセット)」とは、伸縮のストレスがかかる部分を補強するために縫い込まれる別布のことで、トレーナー以外の衣類でも、脇下や、クロッチ(股)などの部分にダイヤの形をした布が付けられていたりします。

この「Vガゼット」、古着好きの人ならよくご存知かもしれませんね。
というのも、ヴィンテージ・スウェット特有のディテールとして知られているからです。

ヴィンテージ・スウェット好きの人がよく「両V」とか「前V」と呼んでいますが、「両V」とは、前後両方の首元にガゼットが付くもの、「前V」は前部分のみにガゼットが付くもののことです。

また、このVガゼットにはその縫製仕様で「はめ込み式」と「貼り付け式」の2つの方式があり、一見似ていますが、役割・機能が異なります。

「はめ込み式」は首元のスウェット生地をV字にカットし、その部分に襟と同じリブ素材の逆三角形の生地を両面から貼り合わせてはめ込んだ仕様のことを言います。
裏から見てもリブ素材のガゼットの形が見えるので、見分けは非常に簡単で、「両V」のものはほとんどこの「はめ込み式」のものだそうです。
横方向への伸縮性が高いリブ素材を使用することで、首の着脱が容易になり、また、スウェット生地の伸び防止にもなります。

「はめ込み式」は製造に手間がかかるため、時代の流れとともに減少していき、「両V」のものは1940年代くらいまで、「前V」のものも1950年代くらいまでのものにしか付いていないそう。特に首元の伸縮性が高く着心地が良い「両V」のものは、その人気と希少性のため高価なのだとか。

一方、1950年代以降に増えたのが、首元のスウェット生地に、逆三角形の生地(多くはリブ素材)を上から縫い付けた仕様の「貼り付け式」です。
表からの見た目は「はめ込み式」と区別がつきにくいですが、「貼り付式」の場合は、ガゼット部分の裏がスウェット素材の裏地になっています。
「貼り付け式」は、伸縮性ではなく、汗止めの目的で付けられているため、多くは「前V」のものなのだそう。首元の伸縮性は「はめ込み式」ほど高くなく、首元も伸びやすいため、着心地や長期着用という点では「はめ込み式」に劣ります。

1960年代頃から、ポリエステル・アクリル・レーヨンなど耐久性が優れた化学繊維素材が混紡されるようになり、生地の性能や縫製技術などが上がったり、また製造コスト削減の流れで、方式に関わらず「Vガゼット」自体が付かなくなっていきました。

とはいえ、今でもきちんと「はめ込み式Vガゼット」が付いている復刻版(レプリカ)の商品は人気で、レプリカ専門のブランドもあります。また、この”ヴィンテージ感”がオシャレなので、新商品でもこのディテールをデザイン的に付けたり、ステッチだけで逆三角形を付けたものもあります。

「スウェット」という言葉は、日本ではトレーナーのような衣服も意味しますが、本来はコットンをメリヤス編みにしたニット生地のことです。
表地と裏地で質感が異なる二重構造生地で、表地は網目が細かくなめらかな質感のメリヤス編みで、伸縮性が高いことが特徴。
一方で裏地はタオルのように糸がループ状になったパイル織りの生地が採用されているため、肌ざわりがやわらかく、高い吸水性を実現しています。

トレーナー(スウェットシャツ)の裏地は「裏毛(うらけ)」とも呼ばれ、このパイル状の裏毛は「裏パイル」とも呼ばれます。
裏パイルのトレーナーは吸水性が高く、厚みが出にくいのに保温性もあり、スポーツや春秋の少し肌寒いシーズンに適しています。

裏毛には裏パイルの他に、裏毛の編みを毛羽立たせて起こした「裏起毛」があります。
こちらは物理的に生地の厚みが増す上に、生地の中に空気が多く含まれることによって保温性が高く、気温の低い秋冬に最適です。

裏パイル、裏起毛どちらも肌ざわりが良く抜群の着心地を誇る上、吸水性や保温性も高く、季節を問わず着られることも、トレーナーが人気の理由でしょう。

トレーナー(スウェットシャツ)が普段着として一般的に広く愛用される理由として、その耐久性も挙げられるでしょう。

秋冬にも大活躍するトレーナーは、同時期に着るニットアイテムなどに比べると、自宅の洗濯機でジャブジャブ洗えて、扱いも楽なので助かりますね。
とは言っても、コットン素材のものは、洗濯縮みが発生します。

その洗濯縮みを軽減する商品を、スウェットシャツの普及に多大に貢献したチャンピオン(Champion)が1934年に開発します。
「Reverse Weave(リバース・ウィーブ)®」というシリーズで、使用するスウェット生地の方向を工夫することで洗濯縮みなどを軽減した、現在でも「不朽の定番スウェットシャツ」「スウェットシャツの代名詞」とも言われ、その人気が続いています。

Reverse Weave(リバース・ウィーブ)®

スウェット生地が縦方向に縮むのを軽減するために身生地を横方向に使用し、さらに両脇部分のリブにより横縮みに対応することで動きやすさを向上したChampionの伝統的な製法です。1938年に製法特許を取得して以来、その高いクオリティは、ミリタリーで鍛えられ、その独特なディテールと抜群の着心地は全米カレッジで人気を博し、いまでも進化し続けています。 <Championホームページより>

 

大事なヴィンテージ・スウェットなどは、手洗いや洗濯ネットの使用、乾燥機の使用を避けることで長く着用することができます。
また、生地の素材も最近は様ざまなものがありますから、必ず洗濯表示を確認の上、最適な洗濯方法でケアしましょう。

トレーナー(スウェットシャツ)はシンプルなデザインなのに、思った以上にたくさんの機能がありましたね!
だからこそ、年中通して快適に着られ、世界中の人に愛されているのだと思います。

次回ももう少しトレーナーのこと、お話したいと思います。お楽しみに。

文/佐藤 かやの(フリーライター)

写真はイメ―ジです。