ファッション豆知識

マフラー 他(2)

ファッション マフラー

2月に入り、暦の上では立春を迎えたものの、大雪に見舞われたり、厳しい寒さに震える日が続いたと思ったら、春のような暖かな日が続いたり。気温が不安定だと、日々のコーディネートにも苦労しますよね。

この時期、寒い日が3日くらい続くと、その後に比較的暖かい日が4日続くという意味で、寒暖の周期を表す「三寒四温(さんかんしおん)」という言葉を耳にされたことはないでしょうか。
近年の日本では、2月下旬頃から春先にかけて使われることが多い言葉ですが、もともとは、中国の東北部や朝鮮半島北部における冬の気候を表す言葉として用いられていました。

そんな寒暖差を繰り返す時期こそ、着脱が簡単なマフラーが便利ですが、最近はマフラーのように首に巻く防寒アイテムが、他にも多く見られるようになってきました。

ファッション マフラー

例えば「スヌード(snood)」も、近年よく見かけられるようになったアイテムです。

首に巻いてしまうと一見マフラーに見えますが、スヌードとマフラーの大きな違いは、スヌードは両端が繋がって輪っか状になっているのが特徴で、頭からかぶって首にはめて着用します。
スヌードの方が着脱がしやすいので、マフラーより愛用している人も少なくないかもしれませんね。

長さは1~2mほどのものが多く、そのまま長く首から垂らしておくスタイルもありますが、首をよりカバーするようにボリュームを出した方が温かいため、冬は二重にして着用する人の方が多く見かけられます。
また、生地の幅が広ければ広いほどボリュームが出るので、幅広のものを二重巻きにすると防寒効果はさらに大きくなります。

ファッション マフラー

でも、「新・田中千代服飾事典」で「スヌード」を調べると、「頭に巻いたり、髪をくくったりする細い紐、または<はちまき>のこと」と記述されています。どういうことでしょう?

スヌード 【Snood】

頭に巻いたり、髪をくくったりする細い紐、または<はちまき>のことで、麦わらやシェニール(chenille)糸などが用いられる。

ちなみに、「シェニール(chenille)糸」というのは、「chenille」がフランス語で「毛虫」という意味を持つことからわかるように、毛虫のように表面をビロードのようにけばだてた糸で、「モール糸」とも呼ばれている糸です。

ファッション マフラー

実はもともとスヌードは、女性の髪を覆う「ヘア・バンド」を指しました。ですので、「新・田中千代服飾事典」では「スヌード」は、「帽子」の項にも登場します。

その原型は、13世紀のフランス王フランソワ1世の妃であるクロード・ド・フランス(Claude de France , 1499-1524)によって考案された、真珠をちりばめたネットで作られたへア・バンドだと言われています。当時の女性は今のイスラム教圏の女性のように、髪を人前で見せることがはばかられていたため、白い製の帽子をかぶっていたそうですが、クロード・ド・フランスが始めたこのおしゃれなヘア・バンドが登場すると、次第に貴族の女性たちの間で広まりました。

その後、特にスコットランドの未婚女性が身につけるネット状のヘア・バンドを「snood(スヌード)」と呼ぶようになり、そこからアメリカでは、「snood」というと、「袋状のヘア・ネット」、または「ネット帽」のことを指すようになったようです。

現在では、麦わらやシェニール(chenille)糸の他に、毛糸やフェルトなども用いられています。

スヌード 【Snood】

(「ぼうし【帽子】の項)


頭に巻いたり、髪をくくったりする細い紐またははち巻のこと。むかしはスコットランドの未婚女性が純潔のしるしにはち巻状に頭に巻いていたものである。アメリカでは<袋形のヘア・ネット>、または<ネット帽>のことをいう。スヌードは13世紀のフランソワ1世の妃クラウド・ドゥ・フランスによって考案され、今日の基本型となったもので、その当時は、女性は人前へでるさい髪をおおわないのは礼儀知らずとされ、白のリネンの帽子をかぶっていたが、フランソワ王妃は真珠をちりばめたネットでへア・バンドをつくり用いた。それからしだいに貴婦人たちにもとり入れられたものである。今日材料には毛糸、フェルト、麦わらやシェニール(chenille)糸などが用いられる。

ファッション マフラー

では、いつからスヌードは首に巻かれるようになったのでしょう?

2009年に行われたBURBERRY PRORSUM(バーバリー・プローサム)の秋冬コレクションで、このスヌードを首にかけたスタイルが登場したのが、スヌードが首周りのファッション・アイテムとして広まったきっかけのようです。割と最近の話なんですね。以降、防寒用のおしゃれアイテムとして、スヌードは一躍注目されるようになりました。

スヌードの素材はいろいろありますが、太い毛糸のニットやファーなどボリュームのある防寒効果の高い生地を使用しているものが多いです。
ニット素材のものはカジュアルな印象に、ファー素材のものはエレガントでフェミニンな印象に、と素材によって雰囲気が変わるので、コーディネートに合わせて素材やデザインを選ぶことができます。
冬のおしゃれのアクセントに最適なアイテムですね。

次回も引き続きマフラーの仲間をご紹介したいと思います。お楽しみに。

文/佐藤 かやの(フリーライター)

写真はイメ―ジです。