ファッション豆知識

マフラー 他(1)

ファッション 豆知識 マフラー

寒さが真冬の厳しさになってきました。
気象庁の予報では、今年2024年1月から3月の平均気温は例年より比較的高めで、全体的に暖冬になるとのことでしたが、やはり1年で最も寒い月として知られている2月ともなると、外出どころか布団から出るのも辛いくらいの寒さです。

そんな冬本番の寒さをしのぐ防寒着というと、ヒートテックなどの「発熱素材インナー」の上に、何枚もセーターなどを着込んでしまいがち。ファッション性よりも防寒対策を優先して着ぶくれしていては、あまりオシャレはできませんよね・・・

冬の冷え対策は、「三首」と呼ばれる「首」「手首」「足首」を温めるのが効率が良いと言われています。
この「三首」は皮膚が薄いため外気の影響を受けやすく、また、太い血管が通っている場所のため、外気によって冷えた血液が身体をめぐり、身体全体の冷えにつながりやすくなります。ですから、「三首」を温めると、温められた血液を身体に行き渡らせることができ、全身がポカポカとしてきます。

特に「三首」の中でももっとも太い「首」周りをしっかり温めると、セーターを何枚も重ねなくても、温かく過ごせます。 今回は、この首に巻く「マフラー」のお話です。

ファッション 豆知識 マフラー

マフラーは、細長い長方形の布で、男女共に首に巻いて着用します。

素材はウール、カシミアやキャメルなどの獣毛、絹など様ざまなものがあり、カラーやデザインも豊富で、防寒アイテムとしてはもちろん、ファッションアイテムとしても活躍するアイテムです。例えば、コーディネートのアクセントとして装飾的に使うのならば薄手の絹織物、首元の保温用には厚手のウールやアクリル毛糸の編み物、などとその目的に合わせて、素材や作り方の異なるマフラーがあります。

マフラー 【Muffler】

衿巻の一種で、衿元に巻く細長い長方形の布をさし、男女共に用いられる。これは、(防寒や他人の視線から身を隠すために、外套やマフラーなどで、身体、頭、首などを)包み隠す意味の<マフル(muffle)>からきた言葉。服装のアクセントなど装飾ばかりでなく、衿元などの保温の役目をする。素材はウール、カシミアやキャメルなどの高級獣毛、絹などの織物、編物、また、タータン・プラッドの毛織物など多種。消音器や弱音器のこともさす。

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「マフラー(muffler)」は、「覆う」「包み隠す」という意味の「muffle」という言葉から生じた英語で、頭や首などをマフラーで覆って、他人の視線から身を隠したり、身体を温めたりする用途から名付けられたようです。

面白いのは、布などで覆うと音なども弱めることができる、ということで、「muffle」には「音などを弱める、消す」といった意味もあります。ですので、自動車やオートバイの排気口にある、音と排出ガスを抑制する消音器も「マフラー(muffler)」と呼ばれていますね。

「muffler」と英語で画像検索すると、自動車やオートバイの部品の写真の方が多く出てくると思いますが、特にアメリカにおいて「muffler」は、一般的にはこちらの消音器のことを指すことが多いようです。(イギリスでは、「muffler」よりも「silencer」と言うのが一般的なようです)

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首に巻く「マフラー」は、イギリスやアメリカなどの英語圏では一般的に「scarf(スカーフ)」と呼ばれます。

「スカーフ」というと、私たち日本人はシルクなどの薄手の四角い布を思い浮かべますが、英語では薄手のスカーフも厚手の防寒用マフラーも「scarf」と呼びます。
ただ、わかりやすいように、私たちが「スカーフ」と認識しているような薄手のものは「thin scarf」、私たちが「マフラー」と認識しているような厚手のものは「thick scarf」とか「winter scarf」と表されることも多いです。

その他素材を表した表記をしている場合もあります。例えば「ウールのマフラー」は「wool scarf」、「カシミアのマフラー」は「cashmere scarf」です。ちなみに、「ウールのマフラー」は「羊毛」を強調して「woollen scarf」と表される場合もありますが、「woollen」はイギリス英語の綴(つづ)りで、アメリカ英語では「woolen」と異なるので注意です。
「handmade knit(ted) scarf(手編みのマフラー)」のように、作り方や形状を表す表記、「thermal scarf(防寒性の高いマフラー)」のように機能を表した表記もあります。

ファッション 豆知識 マフラー

では、「マフラー」は、「トレーナー」のようなファッション用語によくある和製英語なのでしょうか?

実は、英語でも昔は首に巻くマフラーを「muffler」と呼んでいましたし、今でも英語辞書などには載っていますので、首に巻くマフラーを「muffler」と言っても、間違いというわけではありません。今でも古い英語が残るインドでは、首に巻くマフラーは「scarf」ではなく「muffler」なのだそう。

日本では、絹製のマフラーおよびスカーフの話になりますが、『横浜輸出絹業史』という資料によると、「初期には商習慣上正方形のものを総てマフラーと呼び、長方形のものをスカーフと呼んでいた」そうです。今と反対ですね。
また、第二次世界大戦後は、アメリカの輸出関税法の課税対象区分により、23インチ(約58.5cm)幅およびそれ以上の幅のもので、1平方ヤードあたり1オンス以上のものを「マフラー」、それ未満のものを「スカーフ」または「ウェアリング・アッパレル」とし、形状ではなく絹の質量で区別されていたそうです。

ファッション 豆知識 マフラー

今回はマフラーの語源のお話から、マフラーが英語圏では「scarf(スカーフ)」と呼ばれており、日本におけるマフラーとスカーフの区別は、時代によって変遷してきていることがわかりました。

でも、マフラーには、もっとよく似たアイテムが多くあります。
次回は、マフラーと混同されがちな類似アイテムなどについて、お話したいと思います。

ところで、もうすぐバレンタインデーですね。
最近は手編みのマフラーはあまり見かけなくなりましたが、昔は、女の子が好きな男の子へのプレゼントとして、手編みのマフラーを編む、なんてこともありました・・・😳
形が単純で、好みの長さで編めるマフラーは、手編み初心者が最初に製作するアイテムとしてはピッタリ。
この冬は、身体だけでなく、心も温まる手編みのマフラーを、まずは自分のためにひとつ編んでみてはいかがでしょう?編んでいる時から、心がほっこりすると思いますよ。

文/佐藤 かやの(フリーライター)

写真はイメ―ジです。