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(ファッション)

毛皮

Fur

ファッション豆知識COLUMN

あけましておめでとうございます。
今年もファッションにまつわるちょっとした豆知識をお届けしたいと思いますので、よろしくお願いいたします。

さて、1月に入ると、東京でも雪が降ったり、寒さが一段と厳しくなります。
つい暖かい家の中にこもりがちですが、新年はイベントも多いので、下着から保温力のあるアイテムを重ねた最高レベルの防寒スタイルをしてでも、外出したいものです。
最強の防寒着というと、少し前までは毛皮のコートなどを思い浮かべましたが、今はダウンや防寒機能の高い新素材が多く出ているので、毛皮を見かけることはほとんどなくなりました。お正月や成人式などの着物の時に、毛皮のストールを羽織っている人を見かける程度でしょうか。

けがわ【毛皮】

柔らかい毛のはえた哺乳(ほにゅう)動物の皮をはぎ、なめしたものを一般に毛皮といい、英語のファーに相当する。元来は動物の皮膚をはいだだけのもの、つまり毛皮の原皮のことをいう。毛をとりのぞいたものはたんに皮(皮革)とよんで毛皮と区別する。英語でファー(fur)、フランス語でフリュール(fourrure)という。

解説:「新・田中千代服飾事典」より

毛皮は、今では装飾性の高い、お金持ちの贅沢ファッションのように思われがちですが、人類が手にした最も古い防寒着でもあります。厳しい寒さから命を守る機能衣料で、「原始人が着ているもの」というと毛皮のイメージなのではないでしょうか。日本では北方の山岳地帯で狩猟を行っている「マタギ」などに、その古来の使われ方が残っています。

また、狩猟が勇敢さを表すためか、毛皮を身につけることが権威の象徴にもなりました。

【歴史】毛皮は寒さを防ぐために、エジプト時代以前(紀元前1000年ごろ)からあったもので、もっとも原始的な衣服の材料であった。狩でとった動物の毛皮をからだにまとい、飾りまたは権威をつけるためのものともした。紀元前800年ごろになってはじめて婦人の間でも毛皮が用いられるようになっている。また中世には王侯、貴族、僧りょの間で、高い位を意味するものとして使われた。毛皮を染めることが始まったのは十字軍時代といわれ、将軍たちがその功績をたたえるしるしとして、毛皮の使用が許されたといわれている。13世紀にはいってからは、それまで裏や衿にのみ用いられていた毛皮が、衣服の表に用いられるようになり、19世紀にいたって黒貂(くろてん)、ラッコ、アストラカンのコートが流行した。

解説:「新・田中千代服飾事典」より

毛皮の衣料は、今では表地として使われるのが一般的ですが、1870年に初めてパリのファッション界に毛皮が登場した時は、それまで裏地で使われていた毛皮が表地として使われ、当時の人々を驚かせたそうです。以降、多くの高級ブランドが毛皮を使った服を発表してきました。

老舗高級ブランドのフェンディ(FENDI)は、2014-15年秋冬コレクションで、モデルが歩くランウェイに長い黒の毛皮を敷き詰め人々を驚かせましたが、それは、フェンディが元々毛皮工房として創業したメゾンで、毛皮はブランドにとってシンボルのようなものであり、ブランド・アイデンティティ表現のひとつだったのではないかと思われます。
ブランドのアイコン「FFロゴ」は、今年初め亡くなった、長年フェンディのデザイナーでもあったカール・ラガーフェルド(Karl Lagerfeld)により考案されたものですが、「FUN FUR=ファン・ファー」という意味があります。
また、今年の春には、メゾンに継承されてきた毛皮のサヴォアフェール
(Savoire-Faire 「伝承の技術」)に敬意を表した「フェンディ・クラフ(FENDI CraFF)」展が、東京・表参道でも開催されました。

初めてパリのファッション界に毛皮が登場したのは、1870年「ドゥウセ」という店においてである。毛皮を裏地としてではなく、表に使ったデザインのものが発表され、当時の人びとを驚かせた。当時<なめし>の技術は完全なものではなかったため、いろいろな苦情がもたらされたといわれるが、その後縫製、なめしの技術がすすみ、防寒の目的よりその豪華な装飾的効果において、高級衣装店にはなくてはならない材料となった。また年代によっては毛皮のブームをみ、若い年齢層やジュニアの間においてまで用いられ、毛皮はもはやぜいたく品とはいえないほどに普及したこともある。1980年代後半からは、エコロジー・ブームや動物愛護運動の高まりとともに、毛皮の着用を徐々に手控える傾向にある。 その代用としては、フェイク・ファーやキルティングなどが使われることもある。

解説:「新・田中千代服飾事典」より

しかし、近年人々の毛皮に対する考え方は、大きく変わってきました。動物愛護やエシカル(倫理)な観点から毛皮使用に対しては否定的な人が増え、多くの高級ブランドが、毛皮を使用しないことを宣言(ファーフリー宣言)し始めています。

動物素材を使わないサステイナブルなブランドの先駆者として知られているのは、ステラ・マッカートニー(Stella McCartney)です。彼女のブランドでは毛皮のみならず、動物性のレザーは2001年のブランド創設時から一切使っていません。

アルマー二(ARMANI)が米国動物愛護協会および毛皮に反対する国際連盟との合意の下、2016-17年秋冬コレクションから全ブランドにおいて毛皮の使用を廃止すると宣言した後、グッチ(GUCCI)やヴェルサーチ(VERSACE)など高級メゾンが次々とファーフリー宣言しています。昨年12月には、シャネル(CHANEL)が毛皮のみならず、爬虫類などの希少動物の革(エキゾチックレザー)の使用を今後廃止すると発表しました。

日本でも実はユニクロ(UNIQLO)が2005年にはすでにファーフリー宣言をしており、スナイデル(SNIDEL)やフレイ・アイディー(FRAY I.D)など人気ブランドを展開するマッシュホールディングスも、グループ企業全体でファーフリー宣言をするなど、日本も大手アパレル企業をはじめとして多くのブランドが次々と続いています。

また最近ユニクロは、南アフリカでのアンゴラヤギの虐待が明らかになると、2020年までにアンゴラヤギの毛である「モヘア」の使用も中止することを発表しています。
これは、近年急激に人々の毛皮離れが進んだ理由の1つでもあるのですが、従来は決して表に出ることはなかった毛皮の生産工程の動画が、動画サイトやSNSで拡散されたことが発端でした。動画は多くの人にショックを与え、毛皮に対する嫌悪感が一気に世間に広がっています。特に毛皮に対してポリシーのなかった人も、外で毛皮の付いたものを着用するのは、なんとなくはばかれるような風潮も感じたりします。コレクションでも、毛皮を着る仕事は一切引き受けないというモデルもいます。

いまやフェンディなど一部のブランドを除いて、ファーフリー宣言をするブランドは世界中に拡大しています。

動物の毛皮を剥いで使用するリアル・ファーに代わって使用されているのは、アクリルなどの化学繊維で作られたフェイク・ファーです。近年は、「(高級なリアル・ファーが買えないから)偽の」というネガティブな意味の「フェイク」を使わず、地球に優しいエコロジカルな観点から「エコ・ファー」と呼ばれることの方が多くなってきました。

毛皮離れを促進しているもうひとつの理由として、このエコ・ファーの技術の進化が挙げられます。リアル・ファーに限りなく近い風合いを持つ素材が次々と開発されており、リアル・ファーの必要性がなくなってきているのです。日本はこれらの開発技術でトップクラスを誇り、多くの高級メゾンが日本で開発されたエコ・ファー素材を使用しています。

また、染色やデザインも自在にできるエコ・ファーは素材として使いやすく、しかも安価なので、若い人たちでも気軽にファー・ファッションを楽しめます。
もちろん保温性もあるので、ストールやバッグなど小物なども含めて、冬のファッションアイテムとして大活躍しています。
海外ではエコ・ファー専門のブランドも出てきています。

大きさも自在なため、冬の寝具でも多く愛用されているようです。ただし、以前「パジャマ」の回でも書きましたが、エコ・ファーは石油系の化学繊維なので、睡眠時の火の元には十分注意してくださいね。

しかし最近、このエコ・ファーにも批判が出ています。

使用されるアクリルもポリエステルも、生分解しない化学繊維なので、環境に害とされています。つまり、近年問題になっている「プラスティック製品」なのです。特に問題なのは、生産や洗浄の過程で発生するマイクロプラスティックです。反対に毛皮は生分解されるので、環境を汚染することはありません。

また、フェンディのデザイナーであったカール・ラガーフェルドは、毛皮生産者の生計も考えなければならない、と答えています。多くの毛皮生産者が、狩猟以外仕事のない農村のことが多いのだそうです。
「みんな環境を汚染するフェイク・ファーに一目散だが、人間がレザーを着て肉を食べる限り、毛皮は合法的かつ必要な存在だ。もちろん動物はきちんと扱われるべきだけどね」

毛皮の問題は、人間と動物、地球環境の関係など、自分を取り巻く社会だけの問題というより、人類の大きな難題を提起しているのです。

色々迷いますが、大事なのは、様々な情報を得て「自分なりに考えて」使うこと。

筆者は、人間と動物および自然との関係については、アイヌやイヌイット、アラスカの先住民族のクリンギット族のような、独自の哲学で自然と共存している民族の暮らし方にヒントがあるように思っています。彼らは生きるために、動物の命を頂戴して食べる際、「必要以上に殺さず、感謝して残さず食べ、活用する」といったような習慣を後代に伝えています。
毛皮も一切拒絶するというのではなく、できるだけこれまで流通しているものをリサイクルして活用するのがよいのではないかと思います。

ファッションは着る人の哲学が加味されると、一層その人を輝かせます。
みなさんの毛皮に対する考えは、いかがでしょうか?

文/佐藤 かやの(フリーライター)