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渋谷ファッション&アート専門学校

服飾専門課程
(ファッション)

セーター

Sweater

ファッション豆知識COLUMN

気がつけば1年もあとわずか。外はすっかり冬の装いになりました。

冬のファッションといえば、セーターは欠かせません。老若男女問わず、おそらく誰しもが1枚は必ず持っているのではないでしょうか?

「セーター」と聞くと私たち日本人は、アラン・セーターのように毛糸で編まれた被り式のものをイメージする人が多いように思います。非常に多くの種類があるセーターですが、大きくは3つの形に分けられ、日本ではその3つの形のうち、頭から被って着用するプルオーバー型のものだけを「セーター」とよんでいるのです。

セーター【Sweater】

男女ともに用いる編み物の上着の総称である。セーターは形の上からプルオーバー(pullover)とカーディガン(cardigan)、スリップオーバー(slipover)の3種にわけられ、日本では一般にプルオーバー風のものをセーターとよんでいる。

セーターの語はスウェット、汗をかかせるものの意味があり、1891年にアイビー・リーグのフットボール選手がトレーニングのさいにかく汗をよく吸収するさっぱりした編物のブラウスのユニフォームを採用したのがはじまりといわれる。今日ではスポーツ用ばかりではなく、刺繍(ししゅう)やビーズ刺繍をほどこしたり、金糸のレース編などによるものでイブニングやアフタヌーン・ドレス用のセーターもつくられている。

一般に毛糸の手編、機械編あるいはメリヤス布地を裁断したものが使われ、伸縮が自由であたたかく、軽くとりあつかいが便利であるため、ふだん着、家庭着としてなくてはならないほど普及している。

解説:「新・田中千代服飾事典」より

確かにセーターの英語表記は【Sweater】ですが、冬の防寒着がまさか汗【Sweat】と関係あるというのは少し意外な気もしますね。ただしこれは英語圏だけの話で、フランス語など他の国では汗とは関係づけられていないようです。また、このフットボール時に採用された「セーター」は、今でいう「ジャージ」や「スウェット」生地のようなものだったのではないかといわれています。優れた吸汗性だけではなく、その伸縮性による着やすさ、動きやすさゆえ、以来、他のスポーツでも着用され、スポーツウェアとして一般化していったようです。

私たち日本人がイメージする編物のセーターは、産業革命を経て20世紀に入り機械編みが本格化し大量生産が可能になると、一気に庶民の日常着として広まりました。今では世界中に広まったセーターですが、その起源はどのくらい昔からあるのでしょうか。

編物は古くからあったが、現代のような編物は13世紀ごろイタリアで行われたのが最初とされ、15世紀にはヨーロッパからイギリスに伝わった。1589年にイギリスの牧師ウィリアム・リー(William Lee)が編物機械を発明し、その後欧米で編物がさかんになった。

解説:「新・田中千代服飾事典」より

「編物」ということでいえば、その起源はかなり古い時代に遡ります。「新・田中千代服飾事典」の「編物」の項目を見ると、なんと旧石器時代には、狩猟や漁労に用いる網などの技法にすでに編物の技術が用いられていました。衣服としての最初の編物はエジプトの墓で発見された靴下だそうで、その靴下は紀元前7〜8世紀頃にアラビア砂漠の遊牧民が履いていたものだと推定されています。

現代の編物の形になったのは、上記の事典にも記述があるように13世紀のイタリアで、2本の編棒によって編まれたものでした。これは、ペルー、アフリカ、ヨーロッパ各地で発見されたコプト人(主にエジプトにおけるキリスト教徒)の帽子にみることができるようです。その後イタリアからフランスを筆頭にヨーロッパ各地に広がり、イギリスに伝えられました。

日本に西欧の編物が入ってきたのは、江戸時代。キリスト教の伝来とともに、スペインやポルトガルからメリヤス手編み技術がもたらされたといわれています。ちなみに、「手編みの基礎」ともいわれるメリヤス編みですが、その語源は「靴下」を意味するスペイン語の「medias(メディアス)」やポルトガル語の「meias(メイアス)」がなまったものといわれ、日本にもたらされた最初の編物が靴下だったことから、「メリヤス」は「編物」を総称する言葉として使われるようになったそうです。

そして、セーターが世界中で様々な発展をするとともに、そのファッション性も高まっていきました。

婦人の服装にセーターとスカートというスタイルをとりいれたのは女流デザイナー、シャネルであるといわれ、また今日みられるような美しい形のセーターをつくり、これをふだん着的なものとしてでなく、りっぱなドレスにまで高めたのはフランスのデザイナー、アニー・ブラットであるといわれている。

解説:「新・田中千代服飾事典」より

今でこそ、エレガントな女性らしい保守ブランドの印象のあるシャネルですが、元々は女性の社会進出を象徴する革新的なブランドでした。創業者のガブリエル・シャネルはそれまでの身体を締め付け、着るのが困難なドレスに反し、活動的な女性のために着やすく動きやすいスタイルを提案してきました。そのひとつがセーターでした。それまでは男性がスポーツなどをする際に、アウトドアウェアとして着られることが多かったセーターですが、ガブリエルは恋人の服を着るのが好きで、当時の恋人たちから借りたセーターの着心地の良さに感動し、セーターを女性のファッションにも取り入れたのです。

女性の社会進出も進み、女性が活動的になった今となっては、セーターにスカートというコーディネートは普通に見られるスタイルですが、当時は、女性が勇気を持って発した大きなメッセージだったのです。

セーターの応用範囲は広く、スカートやスラックスと組合わせたり、ブラウスとともに用いたり、スーツの下に着るなど、あらゆる場合に用いられる。また色や柄、素材感などに自分の個性を生かして変化ある装いを気軽に楽しむことができるのもセーターの特色である。さらに近年は化学繊維の発達により、夏でも着られるサマー・セーターがあらわれ、四季を通じてセーターは衣生活のうえに重要な位置をしめるようになった。

解説:「新・田中千代服飾事典」より

豊富な色や柄、編み方などや形、そこに素材も加わると、実に数え切れないくらいの種類のセーターがあります。防寒着のセーターなのに、夏に着られるサマー・セーターまで登場したくらい、その着やすさ、着心地の良さが愛されているセーター。
最近ではそのリラックス感ある着心地ゆえに、部屋着としても愛用されています。また、リラックスする上に保温力があるので、ベビー服やマタニティウェアとしても最適です。

冬はマフラーや帽子など小物をセーターと合わせてコーディネートすると、オシャレ感が増します。また、着物やフォーマルに取り入れているオシャレ上級者も見かけます。
油断するといつも同じような地味なセーターとジーンズになってしまう、というものぐさなアナタも、今年は鮮やかな色を取り入れたり、丈を変えてみたり、いつもと違うセーターの着こなしに挑戦してみてくださいね。

文/佐藤 かやの(フリーライター)