ファッション豆知識

ボディス(1)

ボディス

10月になり、夏の暑さもやっと引き、ようやく「秋」を感じるようになりました。

秋といえば、食欲の秋、祭りの秋。
皆さん、「オクトーバーフェスト(Oktoberfest)」という、盛大なビールのお祭りを聞いたことありませんか?
最近、9月後半くらいから10月にかけて、日本各地でも催されるようになったので、ビール好きじゃなくてもご存知の人も多いかと思います。

オクトーバーフェストは、1810年以降、毎年ドイツのバイエルン州ミュンヘン市で開催されているお祭りで、毎年世界中から600万人以上の人が来場し、そのビール消費量は700万リットル以上だとか!まさに「世界一のビールの祭典」です。

日本でも20年ほど前から始まり、今では日本全国で秋に限らず「ビール祭り」として開催されています。昨年まではコロナ禍で開催できなかったところも今年は復活し、盛り上がっているようですよ。 会場ではビール以外のドリンクも揃っているようですし、何よりもソーセージやアイスバインなどの肉料理やソフト・プレッツェルなど、ドイツ名物の食べ物も充実しているようなので、ぜひ家族や友達と一緒に参加してみたいですね。

ボディス

このオクトーバーフェストで、胸元が大きく開いている少しセクシーな衣装を来ている女性が、ビールを運んでいるのを見たことはありませんか?
この衣装は「ディアンドル(Dirndl)」というドイツ南部バイエルン地方からオーストリア周辺の民族衣装です。

ディアンドルの「ディアン(Dirne)」とは、もともと「娘」とか「少女」という意味のドイツ語で、農村から街に出稼ぎに出ていた若い女性たちが着ていたことからその名がつけられたようですが、農村では若い女性だけでなく、子どもから高齢者まで幅広い年齢の女性に、労働着として着用されていました。

1870年頃に、上流階級の女性たちがサマードレスとしてこのディアンドルを着用するようになり、高価な生地を使用したり、刺繍のあるものなど装飾性が高いものも登場し、ディアンドルは農村の労働着から貴婦人の日常着としても発展していきました。特に、チロル風の伝統的なデザインが、貴婦人たちの間でも人気だったそうです。

ボディス

ディアンドルの伝統的なスタイルは、胸元が大きく開いたブラウスの上に、短い袖無しの胴衣とロングスカート、その上に前掛けタイプのエプロンをつけます。
ちなみに、エプロンの腰ひもの結び目が左にあるのは未婚、右にあるのは既婚の意味だそう・・・ちょっと怖い衣装ですね・・・(苦笑)結び目が前にあるのは子どもで、後ろ結びは未亡人やメイドのものなのだそうです。

エプロンがあるので、一見イギリス発祥のメイド服とも似ていますが、あちらはワンピース型で、胴衣とスカートに分かれてはいません。

スカートは、無地やチェックなどのシンプルな柄が多く、エプロンは浅青色が基本だそうですが、最近は、より胸を強調する胴衣や短い丈のスカート、色鮮やかなエプロンなど、より華やかでセクシーにアレンジされたものが、若い女性に人気のようです。

ちょっとビックリなのは、伝統的なタイプのブラウスの丈は胸の下までしかなく、胴衣は直接お腹につけられているのだそう。ドイツの秋は日本より寒そうなので、お腹が冷えないか心配になりますね・・・

そして、ちょっとテーマアイテムの登場が遅くなりましたが、この胴衣を「ボディス(Bodice)」といいます。

ボディス

ボディス(Bodice)は、15世紀のヨーロッパで登場し、16世紀から18世紀にかけてヨーロッパで普及した、女性や女児のための袖無しの胴衣です。

「Bodice」という名称は、語源的には「Body」の複数形の意味があり、それは「ペア・オブ・ボディーズ(A pair of bodies)」という、2つのパーツをひもでつないで作られていた昔の衣服からきているのだそうです。

多くの場合、前身頃が2つに分かれており、ひもで締めたり、ホックで留めたりして、体にピッタリとつけて着用します。
その時のひもが、「レース」の語源だというお話を「レース(1)」でもしましたね。

バストを支えるために、ボディスはしばしば、ベント(葦の一種)や鯨の骨で補強され、コルセットの代わりとして着用された時代もあり、コルセットと混同されていたこともありましたが、基本的にコルセットは下着で、ボディスはブラウスの上などから着るものです。 ベントや鯨の骨で補強されたものは「ステイズ(Stays:英語)」または「コール・ピケ(Corps pique:仏語)」という別名がつき、現在ボディスは、「ピッタリした婦人服の上部、胴衣」という意味で使われることが多いようです。

ボディス【Bodice】

<婦人服の前後身頃>の意味。また多く農婦に用いられている、胴にぴったりあわせ、バストからウエストにかけてしっかり紐締めにして着る<胴衣>のこと。古くはコルセット(corset)やステイズ(stays=からだの線を整えるささえ)の意味にも使われたことばであるが、一般には前述の<婦人服の上部>の意味に使われる。1枚の衣服はボディスとスカートの組合わせからでき、服の構成の2要素の中の一つであるとも考えられる。

ボディス

今回は、オクトーバフェストで見られるディアンドルから始まって、ボディスの概要をお話しました。
ちょっとディアンドルが可愛らしすぎて、説明が多くなってしまいましたが、エプロンの素朴な可愛らしさにセクシーさが加わり、女性の魅力をフルに発揮できるディアンドル、とても気になります。

制服が可愛いと人気だったホームメイドパイ・レストランの「アンナミラーズ」(現在はオンライン販売のみで営業)のあの制服も、このディアンドルを元にデザインされたとか。
結婚式などでも、白いディアンドル風のウエディング・ドレスは、いまだに人気があるようですよ。
いつか着る機会があったら着てみたいですが、その時は子ども用のもののように、ブラウスの胸元が広く開いていないもので挑戦したいと思います(笑)

あ、またディアンドルの話に戻ってしまいました!(汗) 次回は、ボディスの歴史などのお話をしたいと思います。お楽しみに。

文/佐藤 かやの(フリーライター)

写真はイメ―ジです。