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ファッション豆知識

ランタン・スリーブ 他(3)

ランタンスリーブ

今、流行の「袖コンシャス」なファッション。
前回まで、ランタン・スリーブをはじめとした「ふくらんだ袖」をいくつかご紹介してきましたが、調べれば調べるほど、本当に多くの種類があって驚きます!

種類が豊富ということは、それだけ歴史も長いのでしょうか? ちょっと「ふくらんだ袖」の歴史をたどってみましょう。

ランタンスリーブ

ふくらんだ袖が登場したのは、誇張されたファッションが流行していたルネッサンス時代と言われており、この主張する=コンシャスな袖は、男女ともに愛用されたようです。

さらに装飾が華美になっていった17世紀のバロック時代には、パフをいくつも連ねた袖が現れました。
大きくふくらんだ袖を肘(ひじ)辺りでリボンや帯状のものでまとめて段にした「ヴィラーゴ・スリーブ(Virago sleeve)」なんていう盛り袖もあります。よく肖像画で見かけますが、名前はなかなか知られていませんよね。

これらもパフ・スリーブの一種として、分類されています。

パフ・スリーブ 【Puff sleeve】 

(スリーブ 【Sleeve】の項)

パフは<ふくれたもの><ふくらんだ部分>などの意味で、ギャザーなどで肩先とか袖口をゆったり、かわいらしくふくらませた袖をいう。普通短いものをさし、丈の長い場合にはビショップ・スリーブ、メロン・スリーブなどとよぶ。このそでがあらわれたのはルネッサンス時代で、服装のあらゆる面において誇張が喜ばれ、男女とも用いた。17世紀バロック時代にはパフをいくつもつらねたそでがあらわれ、また19世紀はじめ、エンパイア時代にも短いパフだけの袖が復活した。現代においては、1930年代にパフ・スリーブの流行がみられている。

ランタンスリーブ

ギャザーが数段に入り、連続的に膨らませた「マムルーク・スリーブ(Mamluk sleeve)」という袖も、ヴィラーゴ・スリーブと同様、よく肖像画で見かける袖です。
この「マムルーク(Mamluk)」とは、ナポレオンのエジプト遠征で活躍した、もともとトルコ出身の奴隷で構成されていたマムルーク隊のスタイルが語源だそうですが、あのフランス王妃マリー・アントワネット(Marie Antoinette ,1755–1793)にちなんで「マリー・スリーブ(Marie sleeve)」とも呼ばれています。

また、帝政時代のフランスでは、ギリシア・ローマへの憧れから「エンパイア・スタイル(Empire style)」と呼ばれる古典古代のスタイルが流行し、再び短いパフ・スリーブが復活して流行したそうです。

その後、現代においても、ガーリーなファッションの流行が繰り返し来るたびに、その時代の特徴をもったふくらんだ袖が登場しています。

ランタンスリーブ

「プーフ・スリーブ (Pouf sleeve)」という袖も、ほぼパフ・スリーブと同じようにふくらみのある袖ですが、この「プーフ(PoufまたはPouffe)」というのは、もともと18世紀にマリー・アントワネットが始めて、ヨーロッパ全土に広まった、髪を大きくふくらませたヘアスタイルのことです。今でいう「盛りヘア」ですね。
この袖も形を見ると、どうしてこの名前がついたのか納得です。

パフ・スリーブの「パフ(Puff)」もヘアスタイルを指す場合もあり、「Puff hairsytle」と画像検索すると、黒人のふわふわにふくらんだ髪の画像も出てきますが、写真のような18世紀の貴人、特に女性の盛り上がったヘアスタイルが並びます。

時代ごとの流行は様ざまで、現在も個性的な「盛り」スタイルが人気ですが、派手なスタイルというと、バロック時代からこのマリー・アントワネットのロココ時代が一番「盛り度」が高い気がします(笑)

プーフ・スリーブ 【Pouf sleeve】 

(スリーブ 【Sleeve】の項)

プーフはフランス語で<(服や髪型の)ふくらみ><高く飾り立てた婦人の髪型>の意味。プーフ・スリーブはふくらみのある袖のことで、パフ・スリーブ(puff sleeve)とほぼ同型。

ランタンスリーブ

「ふくらんだ袖」で思い出されるのは、「赤毛のアン(Anne of green gables)」の物語です。

両親の死後、孤児となったアンは、色いろな人のところに身を寄せますが、最終的にマシューとマリラという夫妻に引き取られます。

12月のある寒い夕暮れ、クリスマス劇の練習のためにアンの同級生たちがアンの家に来て練習に励んでいるのを、物陰からそっと見守っていたマシューおじさんは、アンが他の女の子たちと何か違っていることに気づきます。それは、着ている服でした。他の女の子たちの服は華やかなだけでなく、当時の流行で袖が大きくふくらんでいました。

いつもマリラが選んだ地味な服ばかり着ていたアンを不憫に思い、マシューおじさんは不慣れながらも、こっそりクリスマス・プレゼントに新しい大きくふくらんだ袖のドレスを用意します。

クリスマスの朝、アンがマシューおじさんのプレゼントを開けると、中には新しい袖のふくらんだドレスが入っていました!それを見たアンは、感激のあまり涙を流して喜びました・・・

ファッションに敏感なこの年頃の女の子にとって、流行の服を着ることができるのが、どんなにうれしいことか! アンの感激が伝わってきて、今読んでも心温まるエピソードです。

ランタンスリーブ

これで「ふくらんだ袖」のお話はいったん終わりますが、「袖コンシャス」ブームはまだまだ続きそうです。

いえ、歴史をたどってみると、様ざまな特徴のある袖がどんどん出て、流行も頻繁に繰り返しているので、実は「袖コンシャス」は「1ブーム」ではなく、「定番」といってよいのではないかと思うようになってきました。

やっと、空や風が秋めいてきました。
秋のさわやかな風が、ふくらんだ袖を揺らします。

クラシカルな秋の装いにもぜひ、あなたの個性をひきたたせる「袖コンシャス」なアイテムを取り入れてみてくださいね。

文/佐藤 かやの(フリーライター)

写真はイメ―ジです。