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ファッション豆知識

ベスト(4) 

ベスト ウエストコート

12月も後半を迎え、街はすっかりクリスマス仕様ですね。
今年は例年よりも気温が高い地域が多いようで、なんとなくまだまだクリスマスは先のような気がしていましたが、クリスマスはもう目の前!今年のクリスマスは、みなさんはどのように過ごされるのでしょう?
華やかなイベントが多い年末年始は、ぜひ、思いっきりオシャレをして楽しみたいですね。

さて、前回に引き続き今回も、イギリス紳士のウエストコートの着用マナーについてお話ししてみたいと思います。

ベスト ウエストコート

スリーピース・スーツでウエストコートを着用する際によく言われるのが、「一番下のボタンは外して着用するのが正しい」という、日本では「アンボタン・マナー」と言われるマナーで、スーツのジャケットでも適用されるマナーです。

このマナーの起源については諸説ありますが、イギリス国王エドワード7世(Edward VII ,1841-1910)が皇太子時代に始めた、という説が有力なようです。彼は美食家で太っていたため、ある晩餐会の席でその窮屈さに耐え切れず、思わず一番下のボタンを開けてしまい、それを見た周囲の人が「国王に恥をかかせてはいけない」と皆がそれを真似た、と言われています。

他には、馬に乗った際に、ウエストコートがずり上がるのを防ぐために始まった、という説もあります。
昔のウエストコートは現代のものよりも丈が長かったので、確かに一番下のボタンを留めたまま座ると、ウエストコートがずり上がったり、裾が横に引っ張られてシワや膨らみの原因となったり、ボタンに負担がかかって弾け飛ぶこともあったかもしれません。

このマナーは、シングルブレストの日中用のウエストコートにのみ適用され、ダブルブレスト、イブニング、裾が平らなもの、または仕事着のウエストコートには適用されないので、注意です。

ベスト ウエストコート

ウエストコートを着用する際は、ベルトを用いず、サスペンダーを用います。サスペンダーをしてから、それを隠すようにウエストコートを着用します。

その理由は、「ウエストコートの裾からベルトのバックルが見えてしまうのは美しくない」と言われていることもありますが、サスペンダーを使うことで、ベルトやバックルの厚みによってウエストラインが不自然に膨らんでしまうのも防ぎます。

もし、サスペンダーが無くてベルトでまかなう場合は、バックルを少しずらして、金具が見えないようにしましょう。
美しいシルエットも紳士の身だしなみなのです。

ベスト ウエストコート

紳士の身だしなみとして、ウエストコートの丈も重要です。

丈が短いと、ウエストコートの裾からシャツが見えて、だらしない印象になりますし、丈が不必要に長いと、胴長に見えてしまいます。
パンツのベルトループが隠れるくらいが良い、とされています。

また、ウエストコートの丈は、パンツの股上とのバランスも考えねばなりません。股上が深いパンツの場合は、ウエストコートの丈を短くし、股上が浅いパンツの場合は、丈の長いウエストコートを着用してバランスをとります。

ウエストコートは、このようにパンツとのバランスで、シームレスなシルエットになるのが美しいとされています。

ベスト ウエストコート

ウエストコートの前のVゾーンには、ネクタイやアスコットタイなど首元のオシャレが必需です。
ネクタイをしたくない場合は、ウエストコートは着用しないというのが、紳士のオシャレマナーなのだそう。

けれども、ウエストコートとパンツの間からネクタイがのぞいてしまっては、丈のバランスで作った美しいシームレスなシルエットが台無しです。
昔はネクタイが現代よりも短かったために、ウエストコートの裾からネクタイが出てしまうというようなことは起きませんでした。
ネクタイが長過ぎてどうしても出てきてしまう場合は、パンツの中に入れるよりもウエストコートの中で折り返した方が、出てきにくいそうです。

ネクタイと同様、シャツがウエストコートとパンツの間から見えるのも、美しくない、とされています。手を挙げたり、お辞儀をした時に少しシャツがのぞくくらいは良しとしても、やはりウエストコートの丈は、パンツのベルトループが隠れるくらいが良いようです。

丈には問題ないのに、どうしてもシャツが出てきてしまう場合は、ベルトではなくサスペンダーを用いると、シャツが押さえつけられて出てきませんよ。

ベスト ウエストコート

また、余談ですが、ウエストコートではなくシャツについても、スリーピース・スーツ着用時のマナーがあります。

例えば、スリーピース・スーツのシャツは、ボタンダウン・シャツは用いてはいけない、と言われています。
ボタンダウン・シャツとは、襟先に小さなボタンがついたシャツで、1900年頃のアメリカで登場したアイビールック・スタイルを象徴するシャツです。(「えり<襟・衿・領>(5)」参照)
つまり、アメリカが産んだカジュアルなシャツは、イギリス紳士の正統なオシャレとしては受け入れられない、ということなのでしょう。

とはいえ、ボタンダウン・シャツは、アメリカの男性ファッションのスタンダードなので、アメリカではスリーピース・スーツの場合でも、ボタンダウン・シャツを合わせる人も多いようです。反対に、ワイドカラーにダブル・カフスのシャツなどを合わせると、「英国気取り」と冷笑される事もあったとか。ファッションにも、イギリスとアメリカの歴史的な関係などが影響しているようです。

ベスト ウエストコート

フォーマルでは色いろなマナーやうんちくがありますが(「礼服」参照)、時代を経るごとにそれらはどんどん簡易化されてきています。

現代の日本人の私たちは、基本的には自分に似合うものを、着ていくシーンに配慮したコーディネートを愉しめば良いと思いますが、たまには、イギリスの伝統的なマナーで、フォーマルを愉しむのも新鮮ですね。

さぁ、次の会食には何を着ていきましょう?
ジェンダーレスな今の時代、女性のスリーピース・スーツ・スタイルもアリだと思いますよ。

次回は、女性のファッションのベストについて、お話ししたいと思います。
お楽しみに!

文/佐藤 かやの(フリーライター)

写真はイメ―ジです。