ファッション豆知識

ボタン

11月22日は「ボタンの日」なのだそうです。みなさん知っていましたか?

現在日本には、日本記念日協会に登録されたものだけでも、実に多くの様々な記念日があるようですが、なぜ11月22日が「ボタンの日」なのかというと、「1870年(明治3年)11月22日に、ヨーロッパスタイルのネイビールックが日本海軍の制服に採用され、前面に2行各9個、後面に2行各3個の金地桜花のボタンをつけることと決められたことから日本のボタン業界が1987年(昭和62年)に制定。登録申請は服飾ボタンの団体として知られる一般社団法人日本釦協会。ボタン産業の育成が目的」(日本記念日協会HPより引用)とのこと。

ボタンというと、学生時代の卒業式で、好きな男子学生の学生服の第二ボタンをもらいにいく女の子が多くいました。これは第二ボタンが心臓に近い、つまりあなたのハートが欲しい、ということだったように思われます。また、男子学生が好きな女の子に渡すのは軍服の名残で、出征時に外して思い出として渡しても、第一ボタンに比べて服装の乱れが目立たなかったためとも言われているそうです。
ボタンにまつわるそんな日本独特の風習も、面白いですね。

ボタンButton、釦

衣服などのあきをとめ、同時に装飾をかねる様々な形をもつ小片。衣服に縫ってつくられた穴あるいはかぎ状のものでとめられる。

ボタンが衣服の留め具として使用されたのは13世紀頃とも言われていますが、それ以前はもっと装飾的な意味合いのものでした。

最も古いボタンは、現在のパキスタンにあるモヘンジョダロ地域で発見された主に湾曲した貝で作られていたもので、約5000年前のものと推定されています。その他エジプトや、ギリシャ、ペルシャなどの古代文明の遺跡から発掘されていますが、いずれも衣服の留め具というよりは、権威を示す装飾品、印章、護符などの役割だったようです。

今でもボタンは留め具としてだけではなく装飾としての機能を兼ねており、中には工芸品としても高質なものもあります。また、留め具ではなく専ら装飾目的の「飾りボタン」というものもあります。

ボタンは香水などと同じく、十字軍によってイスラム社会から西欧社会に伝わったと言われています。
西欧の王侯貴族は金銀宝石などを使って豪奢なボタンを作らせ、その装飾を競ったそうです。それを一般市民も真似るようになり、奢侈禁止令が出たほどだとか。芸術性の高いデザインやアンティーク的な価値があるものは、ジュエリーと同様に高価なものが多くあります。
ハンカチも同様でしたね。昔からおしゃれ競争は、歯止めが利かないようです。

東京・日本橋にある「ボタンの博物館」(完全予約制)では、世界各地から収集した貴重なボタンを見ることができます。収集したもののうち約1600点が素材、モチーフ、年代、国別に展示されていて見応えがあります。機会があったら、ぜひ見に行ってみて下さいね。

ボタンが使用されだしたのは13世紀ころからで、それ以前の服にはほとんど紐が使われていた。当時のボタンは、金、銀、宝石を使った高価なもので、男性の地位を象徴するものとして、また衣服の飾りとして使われた。その後しばらくは男性の豪華なアクセサリーとしてぜいたくなボタンが流行し貴重な装飾品として用いられた。婦人の服装に現在のボタンが使われだしたのは19世紀以後のことで、これは婦人がテーラード服を着はじめたことによる。

ボタンが入ってきた当初、日本はまだ和装が主でしたので、一般の人たちはボタンを留め具としてではなく、根付として珍重していたそうです。明治維新辺りから洋装化にともない、ボタンが衣服の留め具として普及しました。

「ボタン」はポルトガル語の「botão」に由来するというのが有力な説です。江戸時代中期の有識故実家・伊勢貞丈の随筆に「和蘭国にてはコノブと言ふ、ポルトガル国にてはブタンと言ふ、それを言ひたがえて日本にてボタンと言ふなり」と記されているそうです。

「ボタン」の漢字表記は「釦」または「鈕」と書きます。なんとなく体を表していますよね。
というのも、古来から日本では衣服のつなぎ留めは紐で結ぶのが一般的でしたので、ボタンに相当するものはありませんでした。したがって「ボタン」を表す漢字がなく、当時の兵部大輔、大村益次が、服の口に金属製品を入れて紐の代用にするという意味から、この外来語を当て字で「紐釦」と書き、これを「ボタン」と読ませるようにしたと言われています。

わが国では衣服の形式上、ボタンの必要がなかったが、被布(ひふ)などに用いられた組み紐などが行われていた。西洋式のボタンが発達しはじめたのは明治維新前後で、当時は道具を使い、一個一個手で仕上げられたものが多かった。その後ボタンの需要が多くになるにつれて、いろいろな機械が発明され技術も向上した。

ボタンは衣服だけでなく、鞄、靴などにも使用され、素材や形、機能などのバリエーションに伴いその種類は実に多く様々です。

スナップボタン、カフスボタン(ワイシャツやブラウスの袖口に取り付けるボタン)、スタッドボタン、(ワイシャツの第2・3・4ボタンに取り付ける装飾用のボタン)、トグルボタン(ダッフルコートの特徴的な円柱のボタン。木製が多い)、リベットボタン(ジーンズに用いる鋲のボタン、鉄、真鍮、銅、洋白銅などの金属が多い)、チャイナボタン、くるみボタンなどなど!
さらにボタンカバーと呼ばれる、ボタンに被せて使用する装飾用のボタンなど変わり種もあります。

最古のボタンは貝殻でできていましたが、貝殻だけでも白蝶貝、黒蝶貝、茶蝶貝、高瀬貝、広瀬貝、真珠貝、あわび、キャッツアイ、ペンシェル、トップスターシェル、タイガーシェルなどそれぞれ特色のある素材が使われてきました。

また、貝殻のような天然素材だけでも、木、椰子の実、皮革、紐(チャイナボタン)、水晶、大理石、珊瑚、琥珀、べっこう、象牙、水牛の角、骨、クルミの殻などが使用されます。ボタンは小さなものだけに対応できる素材が多いのでしょう。
天然素材のものは熱に強いものが多いのですが、割れやすいのが難点です。クリーニングに出す時は、前もって伝えて保護してもらいましょう。

その他、金、銀、銅、真鍮、鉄、ステンレス、チタン、アルミニウム、ニッケルなどの金属やガラス、陶器、布、紙など工芸品に使用される素材もあります。

しかしボタンの普及には、合成樹脂の誕生が欠かせませんでした。
プラスチック、ポリエステル、ナイロン、アクリルなど生地素材でもお馴染みの素材が使われ、大量生産できるようになったのです。また、天然素材に比べて熱に強く割れにくいので、普段着や作業着にもどんどん使われるようになりました。

ボタンに使用される材料は金属、石、骨、竹、角(つの)、蹄(ひずめ)貝がら、ガラス、陶器、革などで、最近では合成樹脂のものが多く、比較的安価なので一般に使用される。形、大きさ、色彩はさまざまで、衣服にとりつけるためにボタンのまん中には穴や出っぱりがついている。

ボタンはその形も様々で、丸、四角、平型やドーム型、花や動物、キャラクターを模ったものなどがありますが、丸いものの方が割れにくく、またボタンホールに通す際に丸い方が通しやすいこともあってか、今はボタンというと圧倒的に丸型が多いことと思います。

ボタンの穴も、2つ穴、3つ穴、4つ穴、穴なし(足つき・足なし)などそれぞれ機能で、というよりは、デザイン的なバリエーションになっている気がしますね。

ボタンの色や形、デザインなどボタンそのものも、洋服にとって重要なデザインの一部となっています。
イメージを変えたい服、少し飽きてきた服などは、大きくリメイクしなくとも、付いているボタンを変えるだけでイメージがぐっと変わりますよ。
また、その数や配置もデザインとして大きな役目を果たしています。

ボタンをつける場合、その大きさや厚味はもちろんその位置や数、またそのボタンがドレスと調和するかどうかなどにじゅうぶん注意しなければならない。洋服のあきをただ一つの大きなボタンでとめることによって、そこにアクセントがうまれ、1枚のととのった服になっているものもある。単なる装飾として使われる飾りボタンも、なにかとめるという役目が感じられるようなところにおかれるべきで、意味のない場所にあるのは不調和な感じがする。したがってボタンは実用的な役をはたすと同時に、美しさもみられるものでなければならない。

新しい服を買う前に、ちょっとボタンだけ変えてみませんか?
いつもの服がオシャレ着になったり、男物がフェミニンなアイテムになったり、ボタンの力は想像以上に大きいです。

リメイクはセンスが問われるところ。
これを読んだ方は、ぜひボタンを使ってオシャレ競争に挑んでください。
ただし過熱し過ぎて、周囲から奢侈禁止令が出されない程度にしてくださいね。

文/佐藤 かやの(フリーライター)

写真はイメ―ジです。