ファッション豆知識

コーデュロイ

めっきり寒くなりましたね。

寒くなるとつい防寒対策メインで、厚手のざっくりセーターにジーンズやパンツなど保温性が高く、着替えもしやすい定番コーディネートになりやすいのではないでしょうか。ひょっとして、ここ数年同じコーディネートだったりしませんか?夏に比べておしゃれに気を遣わなくなりがちな冬ですが、温かなおしゃれアイテムはたくさんあります。

今年の冬のおしゃれでチェックしたいのは、一昨年くらいから徐々にトレンド生地になっている「コーデュロイ」。
黒板消しに使われる生地、と言えばすぐわかりますね。
保温性の高い生地で、この秋冬はその人気がさらに上がり、多くの商品が店頭で見られます。少しレトロなイメージもある生地なので、昨今のレトロブームのひとつなのかもしれません。

コーデュロイCorduroy

綿ビロードの一種。経(たて)にけばうねの通った織物、コール天のことである。元来はフランス語のコール・デュ・ロワ(cord du roi = 王様のお仕着せの意味。王朝勢力の強い時代に、フランス宮廷で屋外労働者にこの布でつくった作業服を与えたのがはじまりといわれる)のことであったが、のちにこれが英語読みになり、コーデュロイとよばれるようになった。なおコーデュロイズ(corduroys)と複数の場合は、コール天でつくられたズボンを意味する。

コーデュロイは、「パイル織物」の一つです。
パイル織物とは、「添毛(てんもう)織物」とも言われ、生地の表面に下地から糸を織り出した織物をいいます。糸をループ状に織り出すことによって、その間に水や空気を蓄えることができるので、吸湿性、保温性に優れています。
表地に織り出された糸がループ状になっている「ループパイル」と、カットされて毛羽になっている「カットパイル」があります。

ループパイルの代表的なものはタオルです。ループをカットした「シャーリング」という滑らかな風合いが特徴のタオルもありますが、一般的にはループのものが多いかと思います。
一方カットパイルのものには、コーデュロイの他、ベルベット、ベッチン、ベロアなどの生地があります。

このカットパイル生地については、様々な種類の生地があって混同しがちです。その違いについて簡単に整理してみましょう。

まず、その前に「コーデュロイ」と「コールテン」の違いについての質問がよく見られますが、これは基本的には同一のものです。「コールテン」は「コール天」と書きます。昔は「コールテン(コール天)」と呼ぶ方が一般的だったので、「コーデュロイ」を見て「コールテン」と呼ぶと年がバレます(笑)
ちなみに「コールテン」と呼ばれた由来は、「cord=畝(うね)」に「ベルベット(ビロード)」の和表記「天鵞絨(てんがじゅう)」の「天」を付け、「畝のあるベルベット」という意味なのだそうです。

「畝のあるベルベット」という意味がありますが、実はコーデュロイはベルベットとは織り方や素材が異なります。
コーデュロイが横糸でループを作るのに対し、ベルベットは縦糸でループを作ります。また、コーデュロイは綿やポリエステルなど耐久性の高い素材が使われますが、ベルベットは絹やレーヨン・アセテートなどの化繊で作られ、デリケートな素材です。ベルベットは毛足が比較的長いので手触りが柔らかく、美しい光沢があるため、パーティードレスなどに使用されます。

「ベッチン(別珍)」はコーデュロイと同じく綿を主な素材とし、織り方も同じく横糸でループを作るので、コーデュロイに近い生地と言えますが、こちらには畝がありません。
英語では「velveteen」と言いますが、「コールテン」は「corded velveteen(畝のあるベッチン)」の略でもある、とも言われています。

「ベロア」は「毛むくじゃら」という意味のラテン語にその名が由来するように、織物生地を起毛させることによって毛羽立ちを強くした生地です。
「ベロア」と呼ぶものの範囲は広く、パイルを長めにカットしたもの、またパイルを短くカットし、ベルベットのように毛羽を立てたもの、さらに、ベロア仕上げした紡毛織物を指す場合もあります。要は生地の表面を毛羽立たせたものを指すようです。こちらもベッチンと同様、畝はありません。

つまり「畝」が、コーデュロイの特徴なのです。

コールてんコール天

綿ビロードの一種。正しくはコーデュロイ(corduroy)という。縦に毛畝(けうね)がはっきりあらわれて、地あいが別珍(べっちん)よりも厚いものである。横パイル組織に織り、パイル緯(よこ)糸を切ってけば立たせ、畝をだす。畝幅は太いもの、中くらいのもの、細いものなど各種ある。以前はくすんだ色調の無地が一般的であったが、最近では、はでな色合いのものや、柄物、縞物などさまざまなものがみられる。婦人服地、ズボン地、作業服地、足袋(たび)地、はなお地など、実用的な用途に用いられることが多いほか、とくに近年はその風あいが好まれて、おしゃれ着としてもズボン、タイツ、キュロット・スカート、チョッキ、ジャケット、ジャンパー、コート、子ども服などひじょうに広範囲に用いられている。なお平織のコール天は平地コール天、ジェノア・トゥイルと斜文織(しゃもんおり)のコール天はジェノア・コードという。

コーデュロイの特徴である畝には様々な幅があり、「ウェル(wale=織物面の畝)幅」と呼ばれる単位があります。1インチに何本の畝があるかで表します。1インチ四方の穴が空いたルーペを置いて畝を数え、8本なら8ウェル、21本なら21ウェルです。

ウェル幅が広いもの、狭いものなど様々あり、その幅の広さによって印象が違います。
使われる衣服のデザインにもよりますが、幅が広いほどカジュアルで、細いと上品なイメージです。
幅広のものは、場合によっては野暮ったくも見えますが、最近はその野暮ったさを敢えておしゃれ要素として取り入れている若い人が多いように思います。また高級感のあるキレイ目アイテムに合わせて、そのギャップを楽しむおしゃれ上級者もいます。

綿など耐久性のよい素材で作られるコーデュロイは、自宅の洗濯機で洗うことができますが、最近は様々な素材があるので、必ず洗濯表示に従ってください。
耐久性が良いといっても、パイル素材は毛羽をなるべく傷めないように、必ず洗濯ネットの中に入れて、おしゃれ着用洗剤でおしゃれ着コースで洗いましょう。
また、厚さもある生地なので、しっかり洗剤が浸みるよう、洗濯機を回す前に15分ぐらい浸け置いておくと、汚れが落ちやすいと思います。

基本的にはアイロンいらずの素材なので、干す際には一工夫を。裏返して畝がきれいになるよう生地を引っ張り、手アイロンで毛並みと形を整えて干すとよいでしょう。
どうしてもシワが気になる場合は、表面の毛羽を潰さないように気を付けながら、表側からアイロンを浮かしてスチームを当てるか、裏側から軽くアイロンを当てるようにしましょう。毛羽が潰れると、テカリの原因になります。

カットパイル生地類は摩擦に弱いため、着用摩擦によって表面の毛羽が剥げることがよくあります。
パンツやスカートなどでは、裾まわりやズボンの膝裏、ポケット口、腰付近や臀部など、また上着類では衿まわりや衿先、袖口などが剥げたりしていないか、着る際にチェックするようにしましょう。
また、肘、膝、臀部などは、毛羽が潰れてテカリが出てきてしまいます。

ただし、こうした剥げやテカリなどの生地の劣化は、普段着として着用する限り避けようもありません。
着た後、柔らかいブラシで毛並みに沿ってホコリを取り除き、毛並みを揃えておくなど、普段のお手入れに少し気を遣い、できるだけ長く愛用してあげたいものです。

コーデュロイは、帽子などの小物や雑貨には季節関係なく使われることもありますが、基本的には冬物衣料に最適な生地です。ジャケットやワイシャツ、スカートやパンツなどで使われ、老若男女問わず着られます。
ニットと合わせると、見た目も温かさが増しますね。女性の白いセーターにコーデュロイのパンツは、人気のコーディネートです。

まずは、今年流行りのロングタイトスカートやワイドパンツなどに、コーデュロイのものを取り入れてみてはいかがでしょう?
また、コーデュロイのシャツは、肌寒くなってきた頃には前を開けて羽織り物として、寒くなったらセーターの下に着て襟だけのぞかせたり、長く着られるアイテムなので、「買い」ですよ。

冬のコーデュロイは茶系や黒などのシックな無地が多いですが、最近は色や柄のバリエーションも増えてきました。
個人的には冬こそ明るい色のコーデュロイが映えるのでおススメです。
白のコーデュロイのジャケットやパンツに、白いセーターを合わせた全身ホワイトコーディネートも素敵です。また、流行りのラベンダーや鮮やかなブルーなどのものにも目がいきます。
定番の茶系のアイテムを着ても、小物などでスカイブルーなど明るい色を合わせてもおしゃれですね。

温かいコーデュロイを着て、ほっこり温かい気持ちで冬をお過ごしください。

文/佐藤 かやの(フリーライター)

写真はイメ―ジです。