ファッション豆知識

セール

12月から徐々に始まった冬物のセールは、1月に入ってすぐの初売りセールからいよいよ本格化し、学生はお年玉、社会人はボーナスで、狙っていたアイテムをお得に買うチャンスとばかりに、毎年本当に多くの人がバーゲン会場に殺到します。

さて、この「バーゲン会場」の「バーゲン」は「バーゲン・セール」の略で、日本だけの使われ方です。本来の英語の「Bargain」は、実際の価値よりも安い値段の「お買い得品」「掘り出し物」といった意味で、「安売りセール」の意味はありません。英語の「Sale」は「売る」「販売」といった意味で、安売りではないプロパーの商品でも使いますが、いわゆる「安売りセール」の意味でも使います。

「クリアランス・セール」といった言葉もよく聞かれますが、これは「在庫一掃セール」であり、在庫を無くすのが目的ですから、値引き率はどんどん高くなりかなりお買い得なセールです。

セールの値引きは「30%引き」などと「率」のため、上代が高い物ほど値引き額は大きくなっています。上代の高いアイテムが多い冬物のセールの方が夏よりもお買い得、ということになりますね。普段から狙っていた高級ブランドの物も、安く買えるセール時に買うのが得策です。

セールSale

<販売><売上高><売り出し>などの意味。バーゲン・セール(大安売)、クリスマス・セールなどがある。

概ねアパレル業界の流通は、SSと呼ばれる春夏物とAWと呼ばれる秋冬物にシーズンを二分して展開されているので、このクリアランスはそれぞれ、夏の終わりと冬の終わりに開催されます。これは、多少の差はあるものの、ほとんど全世界的に夏と冬の終わりにセールがあります。

欧米のセール時期に関しては大きく、ファッションの都、フランス、イタリア、スペインなどのヨーロッパ勢とアメリカに分けられます。

ファッションの聖地、イタリアのセールは「Saldi(サルディ)」と呼ばれます。イタリアではバーゲンの開始日は州ごとで決められていますが、概ね
夏:7月初め〜約2ヶ月
冬:1月初旬〜約2ヶ月
となっています。

スペインのセール「Rebajas(レバハス)※ディスカウントの意味」も、イタリアと同じような期間で開催されます。スペインは「LOEWE(ロエベ)」に代表されるように皮革製品の品質が良く定評があるので、お買い得なこの時期にバッグや靴をまとめ買いしに行くファッショニスタも多いと聞きます。

フランスのセールは「Solde(ソルド)」と呼ばれ、なんとその期間などは法律で決められています。これは小売店と大型店舗の平等をはかるためで、毎年その日程はフランス政府の公共サ―ビスサイトで公表されるのだそう。フランスでは、ブランド価値を守る観点から、平時の過度な割引が制限されているため、「Solde」は貴重な機会として世界中がその発表に注目していると言えます。
一部の例外の地域や例外の年などはあるものの基本的には、
夏:6月最終週の水曜日〜約1ヶ月 
(6月の最終週の水曜日が28日以降の時は、その前の週の水曜日からスタ-ト)
冬:1月の第2水曜日〜約1ヶ月
(1月の第2週目の水曜日が12日以降の時は、第1週目の水曜日からスタ-ト)
と決められています。
ちなみに、この冬のSoldeは2020年1月8日(水)8:00 ~2月4日(火)の4週間だそうです。

しかし、最近はグローバル企業も増え、アメリカ式のリテイリング(小売業)のビジネスモデルを採用する企業や店も多く、Solde期間以外でも「Solde」という表記は使わずに、値下げして在庫を持たないようにしているようです。
また売る商品も規定されており、「Soldeの始まる1ヶ月前に店頭で置いてある商品」でないとSoldeに出来ません。日本のように、バーゲン専用商品などの追加もないので売り切れ御免ですが、それだけ良い物が安く買える機会でもあるため、日本でもこのSolde目的の旅行ツアーが多く組まれています。

アメリカはヨーロッパと少し違い、夏は7月4日の「独立記念日(Independence Day)」、冬は11月第4木曜日の「感謝祭(Thanksgiving Day)」の翌日が開始日になっています。
夏:7月4日~8月上旬
冬:11月第4木曜日翌日~1月上旬

この感謝祭=「Thanksgiving Day(サンクスギビング・デー)」の翌日は、どんな店も必ず黒字になるということから「Black Friday(ブラック・フライデー)」と呼ばれ、その大幅な値下げと熱狂で有名です。「ブラック・フライデー」の習慣は世界にも拡がっており、昨今日本でも耳にするようになりました。

この「サンクスギビング・デー・セール(Thanksgiving Day Sale)」から始まって「クリスマス・セール(Christmas Sale)」「ニュー・イヤー・セール(New year Sale)」までが、「ウィンター・セール(Winter Sale)」とか「ホリデー・セール(Holiday Sale)」としてひとくくりの最大のセールとなっており、スタートが早い分年明けはヨーロッパほど長くありません。

アメリカはどんどん売り切るリテイリングのビジネスモデルが主なので、この他にも4月の「復活祭(Easter)」や10月の「ハロウィン(Halloween)」など行事に合わせて、割と頻繁にセールが行われています。

海外のセールでのお買い物は、品揃えも日本と異なり、とても楽しいものです。旅行を計画している人は、こうしたセール時期に合わせるのも良いかもしれませんね。

海外の免税加盟店で買い物をすると、一定金額以上であれば免税手続きの書類を発行してもらい、出国時に空港で払い戻ししてもらえます。

また、オーストラリアやブラジルは日本と四季が反対なので、日本の冬のバーゲン時は、夏です。水着でサーフィンするサンタクロースなども見かけられて、一味違う「クリスマス・セール」が体験できますよ。

海外のセール事情は、昔は現地に住んでいる人やガイドブックから情報を入手しなければなりませんでしたが、今はインターネットがあるので、最新情報や詳細な情報を容易に知る事ができて便利ですね。

インターネットというと、最近はファッションもECの販売が好調です。

ECこそ在庫一掃のビジネスモデルなので頻繁にセールが行われますが、特に冬のセールは、先の「ブラック・フライデー」の次の月曜を「Cyber Monday(サイバー・マンデー)」と呼び、この日を境にシーズン中の売り上げは増長していきます。

「サイバー・マンデー」はアメリカ以外でもカナダ、イギリス、ポルトガル、ドイツ、チリなどでも使用される国際マーケティング用語で、日本では2012年に「Amazon.co.jp(アマゾン)」が12月第2月曜日を日本版の「サイバー・マンデー」として日本記念日協会に申請し、認定されました。

ECでは休暇明けの月曜日の売り上げが好調なことから、この他インターネット・オークションサイトの「eBay(イーベイ)」は、クリスマスの買い物の駆け込み需要が高まる12月の第2週目の月曜日を「Green Monday(グリーン・マンデー)」として設定しています。

ちなみに、イギリスにはクリスマスの翌日に「Boxing Day(ボクシング・デー=箱を開ける日)」という伝統的な大きなセールがありますが、最近はアメリカの「ブラック・フライデー」や「サイバー・マンデー」が普及してきた影響で、昨年末は悪天候など他の要因も重なり、客足は最大の落ち込みを記録したそうです。

実店舗で買うのも、オンラインで買うのも、どちらも楽しいセール。

どちらもキャッシュレスで買うことが多いため、ついつい買い過ぎてしまいます。でも余計な物を買ってしまうような失敗も、ショッピングの面白さのひとつ。
また、福袋もワクワクしますよね。福袋は最近中身が事前にわかるので、家族やお友達と協力して効率良くお買い物をするベテランもいるようです。
また、「バーゲン・ハンター」と言われるセールのベテランもいて、様々な秘訣を教えてくれています。

事前の情報収集から楽しいセールですが、セールの醍醐味はやっぱり買った後。「戦利品」を並べて眺めたり、家で「戦利品」を身に付けてファッションショーをしたりして、セールを充分満喫してくださいね。

文/佐藤 かやの(フリーライター)

写真はイメ―ジです。