ファッション豆知識

パジャマ

残暑も過ぎ、爽やかな秋晴れが多くなる10月。
スポーツや文化イベントも増え、何かと出かける機会が増えます。

でも、たまには予定を入れず、パジャマやルームウェアのままでゴロゴロ過ごす一日も、日頃のストレスや疲れをリセットするのには必要。

「パジャマ」はアメリカ英語では「pajama」、イギリス英語では「pyjama」と書き、上着とズボン一揃いで複数形の「pajamas」「pyjamas」になります。

日本の「寝巻」にあたるもので、基本的には就寝時に着用します。良質な睡眠がとれるよう、伸縮性のある肌触りが良い素材で、ゆったりしたデザインで作られているため、リラックスするには最適な衣服です。

ちなみに、日本語の「寝巻」ですが、「寝間着」と書く人もいます。どちらが正しいのでしょう?
寝る間に着る服、ということで「寝間着」が正しいと思いがちですが、「寝間着」は実は当て字で、「寝巻」の方が古来の日本の言葉です。(「寝巻き」とも書きます)ただし今ではどちらも問題なく使用されており、新聞などでは「寝間着」と表記されています。
旧来の和装を指すイメージが強い「寝巻」に対して、「寝間着」は文字からして「寝間(寝室)で身に着ける衣服」ということで、欧米のナイトウェアのイメージがありますね。

パジャマPajamas

男女ともに着る洋風の寝巻で、上着とズボンからなるひとそろいをさす。イギリスでは、Pyjamasとつづられる。正しくはパジャマズと複数でよぶべきである。ふつう前あきでゆったりと仕立てられ、衿つき、衿なしのものや、長袖、短袖のものなどがある。通常木綿、タオル、ナイロン、絹、化繊などの材料が用いられ、無地、縞、その他のプリント柄が多く用いられる。吸湿性にとみ、運動量が多く、肌ざわりがよく、しかもソフトなふんい気やときには楽しい感じのものであることが、寝具としてのパジャマの条件である。

素材は木綿や絹などの天然素材からナイロンなどの化学繊維(化繊)まで様々です。

基本的にパジャマは吸湿性を優先するため、綿生地の他、パイル地やワッフル地、マイクロファイバーやガーゼ地などタオルに使用される生地を使用することが多いですが、最近はガーゼ地のものが人気です。若い女性の間では、肌触りもソフトな上、化繊でも吸湿速乾性が高いマイクロファイバーも人気があります。
ただし、速乾性が高く発熱性のあるものなどは、長時間直接肌に触れていると肌が乾燥しやすくなるので、冬期はある程度の保湿に留意したいもの。また化繊は燃えやすいので火の元にも注意です。
個人的にはパジャマを含めた寝具は、適度な保湿力があり安全性の高い天然素材を使用するようにしています。天然素材の肌触りは、よりリラックス効果があるような気がします。特に小さな子供のパジャマは、ぜひ天然素材を選んであげたいですね。

同じく西洋式の寝巻としては、女性用のワンピース型のもので「ネグリジェ(négligé)」がありますが、なんとフランス語で「だらしない」という意味だそうです。
ワンピース型のネグリジェは17世紀頃のフランスで登場したと言われており、当時は男女問わず着用されていました。
今は専ら女性用で着用されているため、レースが美しいものやシルクサテン地を使った高級感たっぷりのものなど、ロマンチックなデザインも多いですよね。

ただ、ワンピース型のため、布団の中でまくれ上がってしまったり、長いものだと寝返りしにくい、など機能性には乏しいので、現代では女性も普段はパジャマの人が多いのではないかと思います。

普段パジャマ派の女性でも、妊娠時には大きなお腹に負担をかけないためにネグリジェを着る人も多いようです。でも妊娠時に限らず、いつもパジャマの人も、たまには気分転換でネグリジェを着てみてはいかがでしょう?新しい自分を発見できるかもしれませんよ。

「スリーパー」と呼ばれる男性用のワンピース型の寝巻もあります。
日本のホテルでは、男女兼用できる浴衣やこのスリーパーが置かれていることが多いと思います。

実は本来の「パジャマ」は、寝る時に着用する衣服ではありませんでした。

パジャマの語源はヒンディー語・ウルドゥー語の「पाजामा (パージャーマー)」または、「पायजामा(パーイジャーマー)」で、インド人やペルシャ人の民族服のゆったりとしたズボンのことだそうです。
その語源をさらに遡ると、「脚用の衣服」を意味するペルシア語だそう。西欧人にとっては異国情緒あふれるアイテムだったのですね。

19世紀頃、インドに駐留していたイギリス人が、寝る時に楽だということで、この民族衣装のズボンをナイトウェアとして着用したことが、就寝専用着=パジャマの始まりと言われています。楽に寝られるこの就寝専用着は、ツーピース型一揃いの現在のパジャマへと徐々に変化していきました。

元来パジャマはインド人やペルシア人の着ていた足首までのゆったりしたズボンのことで、今日ではほとんど寝巻のことをさすが、またこのスタイルをとりいれたドレスのこともいう。ビーチ・ウェアなどには、明るいだいたんな柄のものが、またイブニングふうのものには豪華な感じの布や、いきな感じのデザインのものがみられる。部屋でくつろいでカクテルなどを手にするときにふさわしいスタイルである。1930年ごろ流行したスタイルであるが、1966年ごろからまた流行を見た。1968年秋冬のパリ・コレクションにもコンビネゾン・パジャマという作品が発表されたが、上下続いていて、下はパジャマのように太くやわらかいパンツで、黒のビロードでつくられ、ウエスト・ベルトと肩のストラップがボタンでとめられているという、現代ふうなものである。

今では日本でも、パジャマは多くの人が着用していますが、元々日本には就寝専用着はありませんでした。

鎌倉時代、身分が高い人々は白小袖という下着姿で眠り、庶民は着物のままでした。しかし、江戸時代の末期になると銭湯が普及し、湯上がりに着用されていた浴衣が、その吸汗性や肌触りの良さから就寝時にも着られるようになりました。

1950年代には、海外からパジャマやネグリジェが輸入され、アメリカのホームドラマの影響などもあり、憧れとともに急速に普及していきました。当時は、男性や子供用はパジャマ、女性用はネグリジェとスタイルが分かれていましたが、女性の好みの変化や機能的にも布団の中で動きやすい方が好まれたためか、やがて女性も機能的なツーピース型のパジャマを着用するようになりました。

最近では就寝時だけのナイトウェア、部屋にいる時のルームウェアと分けずに、肌触りが良く伸縮性のあるゆったりした普段着をルームウェアにして、そのままパジャマとしている人も多いかもしれませんね。特に男性はTシャツにスウェットなど愛用している人が多いのではないでしょうか。

女性も自宅の中とはいえ、宅配便の人が来たりすることも考えると、パジャマのままというわけにはいきません。最近は男性と同様、ソフトな普段着をそのままルームウェアやパジャマとして着る人が増えているように思います。

ちょっとそこのコンビニまで、という場合には、ルームウェアの延長で「ワンマイルウェア」というカテゴリーも登場しました。

普段着をそのままパジャマに、と考えると、パジャマが登場する以前に回帰する傾向と言えるかもしれません。昔は普段着が着物やきちんとした洋装だったため、パジャマと着分ける必要がありましたが、普段着の方がパジャマのようなソフトな素材になったことで、着替える必要性が低くなったのです。

基本的にリラックス用途のパジャマですが、「新・田中千代服飾事典」によると、リラックスだけではなく「楽しい感じのもの」であることがパジャマの条件とされています。確かに楽しいパジャマを着ると、楽しい夢を見そうですよね。

パジャマで「楽しい」と言えば、「パジャマ・パーティー」。

パジャマ・パーティーとはその名の通り、参加者全員がパジャマを着て行うパーティーで、通常10代の女の子たちが友だちの家に泊まり込み、パジャマ姿でうわさ話や遊びに興じます。アメリカでは「スランバー(slumber=まどろみ)・パーティー」と呼ばれ、ティーン女子の間で定着しているイベントのようです。パジャマのリラックス効果で、いつもは話せない本音など話せて、より仲良くなれるのが魅力だとのこと。ドレスを着るパーティーとは違い、とにかく楽なので長時間パーティーできちゃいますね。

最近はパジャマやルームウェアの専門ブランドも人気で、目移りするほどおしゃれな商品が多く出回っています。
パジャマでもおしゃれで写真映えもするため、インスタグラムなどにも楽しそうなパジャマ・パーティーの写真が多くあがっていて、見るだけでも楽しい気分になります。
お揃いのパジャマで盛り上がるのも良し、それぞれのおしゃれパジャマを披露するのも良し。楽しみ方はたくさんありそうです。

また、気が滅入る病気の時や、特に長く入院する時は、あえて気分が明るくなるようなパジャマを着るのも良いと思います。病は気から、とも言われるように、明るく前向きな気持ちは、身体の回復力を促す一助になります。

おしゃれなパジャマを着て、窓から爽やかな秋空と雲を眺めているだけでも、心が落ち着いてきたりしませんか?
朝食前に、朝の瞑想からヨガで頭をスッキリさせるのは、とても今っぽいスタートです。
朝食をパジャマのままベッドで食べて、高級ホテルにいる女優気分に。
ペットのいる人は、忙しくて普段できない分、心ゆくまで戯れ合って。
また、いつものテレビではなくDVDなどで観たかった映画を観たり、家族や友達とカードゲームをしたり、ちょっと特別なイベントも取り入れて楽しむのも良いリフレッシュになりますね。

パジャマで過ごす秋の一日。
お気に入りのホットドリンクと一緒に、おしゃれ心も忘れずに。

文/佐藤 かやの(フリーライター)

写真はイメ―ジです。