ファッション豆知識

靴下

Socks/Stockings

クリスマスシーズンには、至る所で靴下が見かけられます。おそらく一年の中で一番靴下が表舞台に立つシーズンなのではないでしょうか。もちろん、それは皆さんもよくご存知のように、サンタクロースがプレゼントを入れていくのが靴下だからです。

では、なぜサンタクロースは靴下にプレゼントを入れるのでしょう?それは、サンタクロースのモデルと言われている聖ニコラウスのこんな逸話が由来と言われています。

ある貧しい家に3人の娘がいました。父は娘たちに幸せな結婚をしてもらいたいと願いつつも、持参金が無いために、長女を身売りして他の娘だけでも結婚をさせようと思いました。それを知った聖ニコラウスは、その家族を助けようと援助を申し出ると、父は施しはいらないとばかりにキッパリと断ります。そこで夜こっそりと窓から金貨を入れた袋を投げ込みました。すると、ちょうど娘たちが暖炉の横に干していた靴下に入ったのだそうです。そのお金で娘3人は結婚でき、幸せになることができました。

聖ニコラウスの温かなストーリーを知ってクリスマス靴下を見ると、より気持ちがほっこりしてきますね。

日本で「靴下」は「ソックス」とも言われます。その長さは様々ですが、だいたい足首までのもの、膝までのものが主流です。膝上の「ニーソックス」も一時若い女性の間で流行りました。また、90年代のスニーカーブームとともに、スニーカーからはみ出さずに素足でスニーカーを履いているように見せる「スニーカーソックス」も登場しました。

スポーツ用やルーズソックスなど用途によって形も機能も様々で、赤ちゃんからお年寄りまで男女関係無く、まさに皆、日常身に付けている身近なアイテムです。また、レッグウォーマーなども靴下の一種です。

くつした靴下

靴をはくときの足をおおうため、靴の下に肌に直接着用されるものである。布製、編物製のものがあり、またその長さも、一般にソックスといわれる足首までのもの、膝までのもの、腿(もも)までのものなど各種ある。男女、子どもの区別なく用いられる。
とくに西洋では、靴下は寝るときや海浜で遊ぶとき以外はかならずはいているのが礼儀であり、素足(すあし)をみせることは恥ずかしいこととされ、肌に密着した主要なものとされる。

解説:「新・田中千代服飾事典」より

靴下の歴史も、これまで取り上げてきたアイテムと同様、やはり起源はエジプトのようです。
初めは布製のもののようでしたが、やがて靴下は履きやすく保温力のあるニット製(編み物)になっていきます。エジプトのアンチーノの町の遺跡や墳墓から発掘された靴下は、ニット製の指付きの子供用の靴下で、4世紀から5世紀の物と考えられています。この他にもエジプトでは精巧なニット製の靴下がいくつも発見されているそうです。エジプトにおいては、夜の寒さに対する保温だけでなく、日中の熱い砂漠の上を歩くための保護の役割もあったため、靴下の需要が高かったのかもしれません。ただし、「プリーツ」の服と同じく靴下も貴重品だったため、王や聖職者しか履けず、「不浄な大地に足を直接付けない」といった意味合いも付加されていったようです。

ニット製の靴下に関しては、イギリスの女王、エリザベス1世がモンタギュー婦人より贈られた手編みの絹靴下を初めて履いた際に、「もう二度と布製の靴下は履きたくない」と言った、とJ・ストーの「イギリス年代記」に記されています。そのエリザベス1世が初めて着用した手編みの長靴下は、今でもロンドン郊外のハットフィールドハウスに保存されているそうです。

靴下の歴史は、すでに2世紀エジプトにはじまるといわれ、文献によれば当時のものは布製で、日本のたびのように親指と他の四本に仕切りがあるもので、主として防寒の目的で使用されたとおもわれる。しかしエジプトをはじめギリシア、ローマなど古代文明の発達した地域は気候が比較的温暖であるため、ズボンや靴下類の歴史性がうすい。
男子がズボンや靴下に似たものをはくようになったのは、気候の寒いヨーロッパ北部地域からはじまった習慣で、西暦約1000年前後から、ふくらはぎくらいまでの短い靴下のようなものが用いられはじめた。これは絹布、薄い毛織物、細糸の綾織木綿、毛布などを材料として裁断し、手で縫い合わせたものであった。1400年代にはいると、腿(もも)まで達する長さのものとなり、胴着にレースなどで結びつけるようになった。この腿までの長い靴下は日本の股(もも)引きに似たもので、ホーズ(hose)とよばれていた。

<中略>

編物の靴下がつくられるようになったのは15世紀スペイン、イタリアにおいてで、ウール製、絹製のものがあった。当時スペインはヨーロッパ最大の富国で、全ヨーロッパの服飾流行のメッカであり、ちなみにスペインの服飾上の黒は、またヨーロッパの流行色でもあった。16世紀中期ヘンリー8世(HenryⅧ イギリス王 1509〜1547)の頃、この絹の編み靴下がイギリス、フランスにもたらされ、またエリザベス女王(Elizabeth I 1533〜1603)の即位2年目、1559年に宮廷の絹物係のモンタギュー夫人が新年の贈物に手編の黒い絹靴下を献上したところ、女王は二度と布製のものは、はきたくないともらされたほど喜ばれたということが、ジョン・ストーの「イギリス年代記」に記されている。

解説:「新・田中千代服飾事典」より

ニット製の靴下は「セーター」と同様、イギリスのWilliam Lee(ウィリアム・リー)牧師によるメリヤス編機の発明により、爆発的に普及します。

ニット製の長靴下を英語では「Stocking(ストッキング)」と表記します。これはアングロ・サクソン語の<木の枝>を意味する「stock(ストック)」が語源で、木の枝すなわち編棒で編んだものという意味だそうです。クリスマス靴下は長めのものなので、英語では「Christmas stocking」と表記します。

現在私たちが「ストッキング」と呼んでいるものは、女性専用のナイロン製の「パンティー・ストッキング」が主です。保温だけではなく脚を美しく見せる機能のあるものですが、元々ストッキングは男性のものでした。女性用が登場したのはスカート丈が短くなった19世紀末、と案外近代のことで、「ヌード・ストッキング」と呼ばれました。女性の解放運動にともない、スカート丈が短くなった背景は「ワンピース」のところでも少し触れていますので、興味のある方はぜひ参照してみてくださいね。

実際に編物の手法がイギリス全土に広まり、一般になされるようになったのは1577年ごろからといわれる。その後1589年にイギリスのノッティンガムシャーの牧師ウィリアム・リー(William Lee)により靴下のメリヤス編機が発明され、しだいにヨーロッパ大陸に広まり、17世紀にいたりウール、もめんのストッキングが大量生産されるとともに急速に一般化し、むかしのいわゆるホーズが用いられなくなった。なお編み靴下をストッキングとよぶようになったのは1583年ころからで、これはアングロ・サクソン語の<木の枝>を意味するストック(stock)が語源で、木の枝すなわち編棒で編んだものという意味とおもわれる。

元来靴下は男子のもので、男子が長い靴下をはく風習 は1830年ごろまで続いたが、女性は長いスカートをはいていたため、長い間靴下を見せる流行をもたず、膝の下までの短い靴下をはき、それを靴下どめでとめて折り返していた。しかし17〜18世紀に流行した享楽的なダンス、ドイツのアルマンド・ワルツ、フランスのカンカンなどは、狂乱的な動きによってスカート内部の靴下を見せるというもので、そのため特異な黒の靴下などが一部では流行していた。靴下が本格的に女性の生活にとりいれられたのは、19世紀末ごろスカート丈の短いスポーツ・コスチュームが現われるようになってからであり、さらに第1次世界大戦後に女性の日常服がスカートの短い活動的な形になり、編み上げの靴がかかとの低いパンプス型(とめ具のない靴)になるなどして、それまでの黒またはガンメタル色の靴下が明るいブロンドに変った。当時はそれを<ヌード・ストッキング>とよんだ。

解説:「新・田中千代服飾事典」より

化学繊維のナイロンの登場が、ストッキングの庶民への普及を推し進めました。調達しやすい素材である上に、ナイロン糸を使用することにより、耐久性と弾力性、美しさが飛躍的に向上しました。

以前は後ろに入っていた線(シーム)が無くなり、今はほとんどが素肌のように見えるシームレスですが、反対にシームが入ったものの方が脚を細く、セクシーに見せることから、また人気が復活しています。特に黒のシームのストッキングは、チラ見せ効果もあり、シンプルなワンピースと合わせると、上品なのにドキッとさせる上級おしゃれアイテムになりますよ。
また、ナイロン製が登場する前の絹製も、今でも高級ストッキングとして愛用されています。一度は身に付けてみたいものですね。

その後第2次世界大戦後、一般に出現したナイロンのストッキングに、靴下はじょうぶさ、弾力性、美しさなどの点で飛躍的な発展をとげた。そのため女性は靴下つぎの苦労からほとんど解放され、「戦後強くなったのは女性と靴下」などのことばも生まれたのである。また1954年にはフランスのオートクチュールのデザイナー、ジャック・ファットが、ぼかし色調や美しい小模様のある靴下を発表して人びとを驚かせた。わが国では<フル・ファッション>とよばれる、後ろにシームのあるストッキングが足が細くみえる、足にぴったりするなどの利点で長い間用いられていたが、丸編式の後ろにシームのない <シームレス>が生活のスピード化にともない、1961年ごろから急激にはやりだし、素肌のようにみえる靴下として、現在フル・ファッションにかわって愛用されている。

解説:「新・田中千代服飾事典」より

「ソックス」「ストッキング」といった靴下類は、コーディネートの大事な一部。あまり見えないからといって気を抜いてはいけません。
厚手のパンティー・ストッキングは「タイツ(Tights)」と呼ばれて、今では素敵な柄物も多く、冬のファッションには欠かせないアイテムです。

大胆な柄でポップなコーディネートも可愛いですが、ちらっと見える、もしくは靴を脱いだら見えた靴下が服とコーディネートされているような、さり気ないおしゃれは、大人の粋を感じます。または真面目なコーディネートなのに、靴下だけポップなキャラクターものだったりすると、その人のユーモアが伝わりますよね。
靴下は普段あまり見えない部分なだけに、見えた時のインパクトが大きいアイテムなのです。

また1965年ごろから流行をみせているショート・スカート、ミニスカートなどにより、足の露出部分が多くなると、靴下は服の一部として考えなければならなくなり、ドレスやセーター、コートなどと調和し、統一された色彩や柄、素材のものが着用されるようになった。赤、紫、黄、緑、黒などの色もののほかに、縞や花模様、レース編や各種の模様編、そしてラメやビーズを編みこみ光らせたものなど、薄さも66ゲージのごく薄いものから厚手ウールのものまで、あらゆるものがみられる。ドレスが短くなるにしたがい、 従来の靴下の長さでは上部のはぎ目が見えるため、たいへん長い靴下が生まれ、ついにそのままパンツに続くといった、いわばパンティー・ストッキングが1968 年秋に登場した。これは靴下どめもいらず、タイツと同様に保温性もあり暖かいなどの点で注目を集めている。またスカートがヒップボーンに落ちてくるにしたがい上半身に着用するもの、とくにヒップボーン・スカートによく調和するとされるセーターはひじょうに長いものが要求され、直接セーターの裾と靴下をとめつける方法すら考えられるようになっている。スカートの中に長い間かくされていた靴下も、このように人間の第二の肌のように全身の丈の半分に近いほどまで着用され、しかもごく薄く肌に密着するなど、女性の装いの中で靴下のしめる位置は近年ますます大きくなり、装いにあわせ、時、場所、目的などに応じて着用されるようにさえなっている。なおストッキングの場合の品質表示は、かならずデニールとゲージによって表示される。

解説:「新・田中千代服飾事典」より

恋人や友達と靴下を対で揃えたコーディネートは、人との繋がりを強めてくれそうです。
寒い冬は、優しく温かい聖ニコラウスにちなんだ靴下で、心も温かくなるコーディネートをしてみてくださいね。

文/佐藤 かやの(フリーライター)

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