ファッション豆知識

オーバーコート

10月も下旬になると、もう冬の足音が聞こえてきます。
アウターもそろそろ厚手のものが必要ですね。

「トレンチ・コート」のようなコートは、本来「トップ・コート」と呼ばれる種類のコートだ、というお話は「スプリング・コート」の回でしましたが、冬用の厚手のものは「オーバーコート」と呼ばれています。日本語で「外套(がいとう)」とも言いますね。「オーバー」と略して言われることが多いように思います。

「オーバー=Over」ですから、すべての衣服の上から着用します。

実に多くの種類がありますが、大きく長さで分けると、膝(ひざ)丈程度のロングコート、腿(もも)丈程度のハーフコート、ウエスト丈程度のショートコートに分けられます。
フォーマルな装いでは、「チェスターフィールド」などロングコートが用いられることが多いですね。
反対に人気の「ダッフルコート」や「ピーコート」などのウエスト丈のものは、元々軍用としても着用されていたように、丈夫な素材のものが多く、カジュアルなアウターとして重宝されています。

オーバーコートOvercoat

オーバーは上から、あるいは外側から着るといった意味で、オーバーコートは他のすべての衣服の上から着るコート、すなわち防寒用の冬のコートをいう。合着として用いるトップコートなどに比べ地厚で重いことが特徴である。

解説:「新・田中千代服飾事典」より

がいとう外套

男女、男女児が洋服の上に着て寒さや風雨を防ぐ衣服のことで、種類はひじょうに多い。英語のオーバーコートまたフランス語のマントー(manteau)はこれにあたる。

解説:「新・田中千代服飾事典」より

フランス語の「manteaux(マントー)」は、日本では「マント」と呼び、袖のない外套のことを指しますが、海外では袖ありのものも含めて外套を「マントー」という場合があるそうです。英語では「mantle」と書きます。

けれども日本では「マント」というと、ヒーローや死神など、ファンタジーの世界のキャラクターに多くみられる、少し非日常的なアイテムかもしれませんね。
それゆえに毎年ハロウィンでは、マントが大活躍です。

袖なしのアウターというと「ポンチョ」という南米の民族衣装がありますが、こちらはすでに雨着やおしゃれなカジュアルアイテムとして、日常着に取り入れられています。

マントーManteau(フランス)

外套(がいとう)の総称。元来は袖なしのゆったりした外套の総称であるが、現在では袖のあるものもふくめてこうよぶ。しかしわが国では一般にマントーとよんで、肩からかけておおう袖のない外套のことをさし、袖のあるものをコートといい、区別している。

解説:「新・田中千代服飾事典」より

ポンチョPoncho

もともと南アメリカで外衣として着用されてきたもので、大きな毛布のまん中に頭をとおす穴をあけ、そこから頭をいれ、余りを前後にたらして着用する。つまり原始型の衣服である貫頭衣(かんとうい)の伝承されてきたものである。 現在では変形されてレインコートや家庭着として世界各地で用いられている。

解説:「新・田中千代服飾事典」より

また、マントと紛らわしいのが「ケープ」。

厳密には定まっていませんが、基本的には手は肘くらい、丈はウエストくらいまでのものを「ケープ」と呼び、それ以上に長いものを「マント」と言うようです。

美容院で使われるメイクアップ用のケープなどもありますが、散髪時にかける丈が長いものは「クロス」と呼ばれていると思います。
肩より短いものは「ケープ・カラー」と呼ばれ「ケープ」とは区別されています。

構造的には、円形の布の中央をくりぬいた「サーキュラー・ケープ」タイプと肩に縫い目を付けて円錐(えんすい)形に作られた「スパニッシュ・ケープ」タイプの2種があります。

ケープは、ワンピースやドレス、スーツ、コートの上から防寒、防雨の目的で着用されますが、中にはスーツやコートに縫い付けられたタイプもあります。
「インバネス」というケープが縫い付けられている男性用のコートは、名探偵シャーロック・ホームズが着ているコートとして有名です。明治時代の初めに日本に入ってきて「とんび」などと呼ばれ和服の上にも着用されました。そういえば、日本の名探偵、金田一耕助も和服の上に着ていましたね。

また最近は、外での授乳時に目隠しの目的で使う「授乳ケープ」が子育てママの間で定着してきているようです。

シンプルな形のケープの歴史はとても古く、「衣服の基本形の一つ」とも言われています。

ケープCape

ケープとは袖のない丸い形をした外套(がいとう)、あるいは肩や背をおおう、 おもに婦人用の外衣のことなどをいう。 現在ではおもに婦人用のものとされているが、中世、近世にはむしろ男子によって多く用いられた。

<中略>

ケープの歴史をたどってみると、その形はエジプト時代に存在した最も原始的な衣服の基本型の一つでもある。当時は上半身にケープ、下半身にスカートを着用していたが、これには四角い布を肩にかけて結ぶスタイルのものと、円形や長円形の布の真中に穴をあけて首を通す形のものとがあった。また紀元前3000年ごろのバビロニア地方の浮彫りにも、ケープを着た美しい婦人像を見ることができる。当時のケープはむしろ薄手の布でつくられ、からだにそってたれ下がった優雅な感じのものであった。 その後材料は薄い布、厚い布、編物、毛皮などのように変り、またいろいろな形で服飾にとり入れられるようになった。フランス語では同じつづりでカプと発音する。ケープの語源はポルトガル語、あるいはスペイン語のカパ(capa)が英語でケープとなったものと考えられる。また日本語ではなまって<カッパ>となり、さらにあて字として<合羽>という字が用いられる。とくに雨のときに用いるものは<雨合羽(あまがっぱ)>というが、日本語のカッパにはウォータープルーフ(waterproof)の意味がある。なおフランス語のペルリン(pelerine)には婦人用ケープ、男性用の短い外套の意味がふくまれている。

解説:「新・田中千代服飾事典」より

なんと、日本の「合羽(かっぱ)」の語源は、「ケープ」だったのですね。
「雨合羽」については、ぜひ「レインコート」の回も参照してくださいね。

アウターはそんなに頻繁にクリーニングしなくても良いので、ついつい同じものをずっと一冬着てしまいがち。
でもたまには、フード付きやマントタイプのオーバーを取り入れたり、色もブラック、グレー、ブラウン系などの秋冬の定番色ではないキレイな色のものをチョイスすると、寒い冬も明るい気持ちで過ごせそうですね。

文/佐藤 かやの(フリーライター)

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