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ファッション豆知識

手袋(1)

前回は、足元の防寒アイテムである「ブーツ」のお話をしましたが、手先も冷えますよね。
手先の防寒アイテムといったら、「手袋(てぶくろ)」です。

英語で「gloves」と複数で表記するように、手袋は2つで1つに数えられるアイテムです。「glove」だけだと、手袋の片方だけを意味します。

商品として扱われる場合などは「一点、二点」と数えられますが、その他にも様々な数え方が手袋にはあります。
「一組(ひとくみ)、二組(ふたくみ)」と「組」で数える方法もありますが、正確に言うと、「組」はまったく同じもの2つが1つになっているものに対して使われる単位なので、左右まったく同じものではないような手袋を数える場合には向かないそうです。英語の「pair」にあたる「対」を使って「一対(いっつい)、二対(につい)」と数える方が良さそうですね。
靴や靴下など足に関するものを数える際に使う「一足(いっそく)、二足(にそく)」もなんと手袋にも使えるのだそう。

また、あまりなじみのある表現ではありませんが、手袋の数え方としては「一双(いっそう)、二双(にそう)」というものがあります。軍手などが販売される際によく見かけられる単位です。漢字の「双」は旧字体では「雙」と表され、2羽の鳥を意味しているそうです。鳥はつがいで見かけられることが多いので、このような漢字が生まれたのだといわれています。この数え方は、イヤリングを数える時にも使えるそうです。

てぶくろ手袋

保温や汚れを防ぐ目的で、また装飾が目的で手をおおってつけるもの。スケートをするときなどは、手を保護する目的がある。英語のグラブ、ミトン、フランス語のガンにあたる。グラブは通常グラブズ(gloves)と複数でよぶことが多い。手袋には大別して5本の指が別々にわかれているものと、親指と他の4本の指とがわかれているものとの2種があり、前者はグラブ、後者をミトンという。むかしは武具としてミトンが使われ、グラブは11世紀ごろから使われるようになった。

解説:「新・田中千代服飾事典」より

みなさんは「手袋」といったら、どんな手袋をイメージしますか?

おなじみの5本指の「グローブ」?
それとも人差し指から小指がひとつになった「ミトン」でしょうか?

手袋の形のタイプとしては、主にこの「グローブ」と「ミトン」の2種ですが、指先が出ている「オープンフィンガー・グローブ」や「フィンガーレス・グローブ」のような指先を自由に使える形もあり、スマートフォンの操作などにも便利です。
最近は、スマートフォンの操作に必要な指が発する静電気や指紋認証を妨げないような導電性素材が開発され、指先が空いてなくてもスマートフォン操作ができるタイプが多く出回っているので、指先を冷やさずに操作できて便利ですね。

では、その思い浮かべた「手袋」は、どんな素材でしょう?

革手袋?
フリース素材の温かいもの?
それとも最近話題のゴム手袋?
「手袋」といったら、やっぱり毛糸の手編み風なものを思い浮かべる人が多いでしょうか。

手袋の素材は様ざまです。
みなさんのよく知っている羊毛やアクリルなどの毛糸、フリースなどのような化学繊維、天然や合成の皮革だけでなく、軍手などに使われる綿、ゴム手袋に使われるラテックスやシリコン樹脂、そしてなんと金属まであります。

素材の多様さは、手袋の用途の多様さに応じているともいえます。

手袋を着用する目的として一般的なのは「防寒」ですが、その他「手の保護」や「防汚」、そして「装飾」の目的もあります。
「防寒」以外の目的では、手袋は冬以外でも季節を問わず用いられます。

「手の保護」というのは、火傷や擦り傷、切り傷などの怪我から手を守ることです。

「軍手」など作業用の手袋は、主に工場や農場、工事現場での作業時に使用されます。
表面に滑り止めが付いている軍手は、引っ越しや物を運んだり、山登りなどでも活躍します。

ただ、軍手は綿製で防水性がないため、水や油のような液体を扱う作業には不向きです。
また、軍手は細かい粉塵はシャットアウトできず、繊維を巻き込む危険もあるので、電動工具の研磨などを取り扱う場合は、怪我防止や粉塵に触れないために、より丈夫な豚革や牛革の手袋を使うこともあります。

「手の保護」という目的で手袋を着用することが多いのは、スポーツをする時です。

サッカーの「ゴールキーパー・グローブ」や野球の「バッティング・グローブ」「ミット」、ボクシングの「ボクシング・グローブ」など競技ごとに特化した手袋があります。

「ミット」は英語では「mitt」と書かれますが、これは「mitten(ミトン)」とほぼ同義の言葉です。
「ミトン」は「グローブ」の原型とも言われ、もともと「武具」として発達してきました。ですから「ボクシング・グローブ」はミトン型なのですね。

その他、「手の保護」だけでなく、つかんだものを滑りにくくする「グリップ性」を重視している手袋もあります。ゴルフ用手袋や、自動車やオートバイのドライブ用などの手袋がそれにあたります。

水や油などの液体や粉塵などからの「防汚」には、「軍手」ではなくゴム製や合成樹脂製などの、いわゆる「ゴム手袋」が使われます。

今、まさに新型コロナウイルス対策で、多くの使い捨てのゴム手袋が必要とされていますが、素手で触ることが危険な病原体や化学物質の付着を防ぐためには、より防汚機能の高い素材の手袋を使用します。
シンナーやトルエンなどを扱う時の溶剤専用のゴム手袋があるように、ひとくちに「ゴム」といっても「ゴムのように伸縮する」という意味で、素材は様ざまです。

医療用手袋は、医療従事者の間で感染症を防ぐ有効な手段として使われている手袋で、特に手術用のものは滅菌処理を行った上、衛生管理のため一双ずつ梱包してあり、価格も高価です。
現在、世界で使われる医療用手袋の生産量の3/5はマレーシアで生産されているそうです。今年の3月から4月にかけて、マレーシア国内で新型コロナウイルスの感染拡大に伴いロックダウンが実施された際には、世界中で医療用手袋の供給不安を招いたと言われています。

この医療用手袋は、今、新型コロナウイルスの世界の感染者数を毎日集計、公開してくれているジョンズ・ホプキンス大学のウィリアム・スチュワート・ハルステッド医師の発案によるものでした。
彼は1890年に、自身の恋人であった看護婦のキャロラインの為に、この医療用の使い捨てゴム手袋を発案しました。当時の手術時は、強力な消毒液に手を漬けて消毒しなければならず、皮膚が弱いキャロラインの消毒液による皮膚炎を防ぐために発案したそうです。殺菌性についても、既存の消毒液に手を漬けて行うものよりも強力であったために、全世界に普及しました。
2人はこの事がきっかけで結婚することになったそうですが、実は、当のキャロラインはこのゴム手袋を使うことは無かったそうです。それは、ウィリアムと結婚して看護婦を引退したから。
医療用手袋にこんな温かな開発秘話があるとは、少し意外でしたね。

反対に、直接人間の手で触れることによって価値や有効性が減る対象物を、人間の皮脂などから保護するために手袋を装着することがあります。例えば、食品産業や精密機械などの製造過程での製品接触、美術品や骨董品の取り扱い、警察の捜査などがあります。

ゴム手袋が日本で普及したのは1950年頃のことで、初めは農業用や漁業目的で多く使われましたが、その便利さから一般家庭にも普及し、主婦の手を護ったとも言われています。
今でも、食器洗いなどの家事の際には、ゴム手袋が欠かせない人が多いですよね。

「手荒れを防ぐ」という目的がより美容的になると、ハンドケア専用の手袋も登場しました。
乾燥するこれからの季節は、重宝しそうですね。

手袋の色や柄は様ざまですが、「白」はちょっと特別な意味合いのある色です。

ドライブ用の手袋でも、タクシーなどの職業運転手の手袋は「白」が多いですよね。
これは「白」は汚れが目立つので、汚れに注意して行う他の作業と同様、手やハンドルをできるだけ清潔に保とうという心遣いの表れでもありますが、「白」は「礼装」を意識した色でもあります。ウェイターやドアマンなど制服のある接客業で手袋をする場合、「白」が多いのもこのためです。

警備員の手袋が「白」なのは、この「礼」を表す以外に大事な役割があります。
警備員は緊急時に人々を安全な場所に誘導するという任務があるため、遠くからでも分かりやすく、誘導をしやすい白い手袋が適しているのです。
ちなみに、警備員は現金の輸送や護衛などに携わるため、事件や事故に巻き込まれる可能性があるので、指紋を残さないためにも手袋をはめているのだそう。

「手袋」は「冬の防寒アイテム」というだけでなく、本当に様ざまな用途があるのですね。

次回は「礼装」としての役割も含めた、「装飾」目的での手袋やその歴史を追ってみましょう。

文/佐藤 かやの(フリーライター)

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