ファッション豆知識

花柄

春になると、草木だけでなく衣服の上にも花が咲き始めます。

古来様々な文明において、花は「美」や「愛」「幸福」、「勝利」や「祝福」「喜び」、そして「生命」といったポジティブな象徴として、人々から愛でられてきました。
実際に花柄を身に付けると、活力が満ちてきて、心が華やぎますよね。

はながら花柄

プリント地などの柄として花をあつかったもので、ジオメトリック調や、オプアート調などと対照的な女らしいやさしい柄である。その種類は多く、写実的な花がプリントされたもの、線画的な単彩のもの、抽象的な影をつけたもの、地がみえないくらいびっしり小花をしきつめた花園のようなもの、小花の並べ方を幾何学的にあつかったもの、更紗(さらさ)的なものなどがある。また前裾、胸などにそれぞれワン・ポイントに大輪の花を配した、いわば和服のつけ下げのような柄もあり、シース(さやのようなほっそりした)なドレスをひきたてる。世界最初の模様 (柄)は古代エジプトのロータス(はす)をモチーフしたものといわれている。

解説:「新・田中千代服飾事典」より

世界最初の花柄は、諸説ありますが、やはり古代エジプトの「ロータス(Lotus)」だという説が有力のようです。「ロータス」は「蓮(はす)」とも訳されますが、エジプトの「ロータス」は、現在「国花」でもある「睡蓮(すいれん)」を指します。
太陽が昇ると花開き、夕方には閉じる、という太陽の動きと連動した習性や、開花した花の中に放射線状に輝く太陽を有しているように見えることから、「ロータス」は太陽を崇拝する古代エジプトでは、太陽のパワーを持つものとして崇められてきました。また、その実は薬としても活用され、実用的にも生命力と密接に結びついた植物だったので、大変重宝されました。そのため、神殿の中にある聖池などに植えられただけでなく、象った護符が好んで持たれ、建築や道具などの文様として広く伝わることになります。

四季があり、季節の移り変わりを楽しむ文化のある日本では、着物に季節の花が多く描かれています。それらは「花文様(はなもんよう)」と呼ばれ、「水仙」「菖蒲(しょうぶ)」「紫陽花(あじさい)」「朝顔」「萩」「牡丹(ぼたん)」など様々な種類があります。
基本的に1種類の花柄の着物は、その花の咲く季節に着るのが良いとされています。おしゃれ上手な人は、少し先の季節の花柄を先取りした粋な装いをしたりするそうです。
ただし、「梅」と「菊」など違う季節の花を組み合わせた文様の場合は、季節を問わずに着ることができます。また、日本の「国花」でもある「桜」だけは、花の代表格として年中着られています。

洋服においても、花柄は春のファッションには欠かせません。
毎シーズン花柄は必ずと言ってよいほど登場しますが、同じ「花柄」でもシーズンごとにトレンドがあります。

「小花柄」は長く愛される定番の柄です。
日本ではイギリスのリバティ社の「リバティ・プリント」が流行してから、この「小花柄」や「中花柄」を目にする事が多くなりました。
今シーズンは、ここ数年続いているレトロブームがまだ続き、ヴィンテージ風のノスタルジックフラワープリントのワンピースが数多く出ています。
特に「小花柄」は遠目には花に見えないため、最近は男性のシャツでも見かけることがあります。子ども服にも多い、老若男女問わず扱いやすい柄です。

2月中旬にパリで開かれていた、世界最高峰のファッション素材見本市「プルミエール・ヴィジョン(Premiere Vision)」では、2020年春夏シーズンのトレンドとして、華やかな手書き風の「大花柄」が多く登場したようです。
これまで「小花柄」「中花柄」が定番の日本でも、最近は「大花柄」のアイテムも見かけるようになりましたね。存在感のある「大花」を身に付けるのには少し勇気が必要かもしれませんが、この春ぜひ皆さんにチャレンジして欲しいアイテムです。

また、南国風な「ボタニカル柄」や「ハワイアン」もトレンドです。いずれも今年はシックなものや手書きヴィンテージ風のものが人気のようです。男性もハワイアン・シャツ(アロハシャツ)なら「大花柄」を身に付けやすいですね。

明るい白地や暖色系の花柄ものは、華やかで「春到来!」のイメージですが、リゾートでない限り少し難易度が高いかもしれません。
今シーズンは、春でも黒地や茶色地のシックなものが多く出ており、あまり甘くならずに、大人感も演出できるコーディネートが楽しめそうなので、これまであまり花柄を着なかった人にもチャレンジしやすいシーズンだと思います。

スカートは、コーディネートに花柄を取り入れやすいアイテムです。
その際、丈感やシルエットにトレンドを意識すると、今年っぽいですね。今年はマキシ丈に加えて、ミモレ丈が注目です。
シルエットも定番のフレアだけでなく、Aラインやプリーツ、タイトなど、少し大人っぽいラインが人気のようですよ。

今シーズンのトレンドワードの「軽やかさ」や「シアー感」を入れてコーディネートできたら、おしゃれ上級者です。

そしてもちろん花柄は、ファッション小物、インテリアでも大活躍。
今年トレンドの手書き風の「大花柄」やヴィンテージ風のテキスタイルは、フェミニンになり過ぎず、ちょっと欧米的なセレブ感を演出します。
新型コロナウイルスによってなかなか外出できない今こそ、部屋のインテリアを春らしく模様替えして、気分を軽やかにしましょう。気分をあげる事は免疫力を高めます。ストレスを溜めない室内環境を作りましょう。
模様替えをしなくても、生花を飾るだけでも部屋が明るくなりますよ。

冒頭でも書きましたが、咲く花を見ると気分が晴れやかになり、生命力を感じます。
と同時に、シックな装いで長い間寒い冬の日を過ごしている間に、気分も内向きになっていたりすることに気付いたりしませんか?そんな少し内向きになっていた気分を上げるのには、花柄ファッションが最適です。

シェイクスピアの劇中では、しばしば花の登場するセリフが出てきますが、そのほとんどは女性が語ってきたように、「花」というと女性のイメージでした。
でも今後は、男性にもどんどん花柄を着て欲しいですね。特にビジネスマンの皆さんは、活力のあるビジネスのために、シャツやネクタイなどを花柄にしてみるのも良いと思います。花が取り入れられやすい職場環境になると、ストレスも減るのではないかと思ったりします。
まずは、ハンカチーフから初めても良いでしょう。

また、「花」は「平和」のイメージもあります。
花柄ファッションを着る人が街に増えたら、世界がもっと平和になるような気がしませんか?

文/佐藤 かやの(フリーライター)

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