ファッション豆知識

ダウン(1)

あけましておめでとうございます!

今年も、身近なファッションに関する豆知識を、ファッション好きなみなさんにお届けしたいと思います。少しでも「へぇ!」と思っていただき、よりファッションに興味を持っていただけたら、うれしいです。

さて、今年の日本の冬は「ラニーニャ現象」(太平洋赤道域の日付変更線付近から南米沿岸にかけて海面水温が平年より低くなり、その状態が1年程度続く現象)によって、「厳しい寒さ」になるそうです。すでに先月、東北・北陸地方が大雪に見舞われ、大きな被害も出ました。被害に遭われた方々には、心よりお見舞い申し上げます。

寒さが厳しい冬のマストアイテムといえば、外出時には暖かな「ダウン」を中綿に使ったコートやジャケット、そして家の中でも羽毛布団は欠かせませんよね。

この中に入っている「ダウン」、実は何であるか知らないという人もいるのではないでしょうか?

時折、中綿が詰まっている形状のものを「ダウン」だと思っている人を見かけます。通販や「メルカリ」などのフリマアプリなどで「ダウンと書いてあったのに、送られてきたものの表示を見たら、中身がポリエステルだった」というトラブルも相次いでいます。
そんなトラブルを防ぐためにも、ここで「ダウン」に関するきちんとした知識を身につけましょう。

「ダウン(down)」とは、水鳥の胸元部分からわずかに取れる、タンポポの綿毛のような羽毛のことで、ニワトリのような陸鳥にはありません。

ダウンは羽軸がなくフワフワしているため「ダウンボール」とも呼ばれます。軽いのに空気をたっぷり含むという特性を持ち、それが保温層となり抜群の保温効果が得られます。ひとつのダウンボールのサイズが大きいほど保温性が高く「良質なもの」とされます。

水鳥の大きさにもよりますが、1羽から採取できる量は5~10gと言われており、とても貴重なものです。

ダウンDown

<若鳥のやわらかい綿毛(わたげ)>のこと。あるいは成鳥の羽の下側にはえている短くやわらかい羽毛のこともいう。防寒用やスポーツ用のジャケット、コート、ベストなど、極上の羽蒲団(はねぶとん)などに用いられるほか、帽子材料としてとくに鵞鳥(がちょう)、鴨(かも)などの水鳥類の綿毛が珍重される。

解説:「新・田中千代服飾事典」より

使われる水鳥は大きく分けると「グース(Goose)」=「ガチョウ類」と「ダック(Duck)」=「アヒル・カモ類」の2種類に分かれます。

ところでみなさんは、「グース」と「ダック」の違いはわかりますか?似ていますが、実は結構違うのです。
一般的にはグースの方がダックよりも首が長く、大きな身体をしています。そばに近寄って見ると、思っていたよりも大きくてビックリしますよ。

グースは身体が大きいためダウンボールのサイズも大きく密度があるので、保温性が高く「良質」と言われていますが、ダックでもアイスランドなどの「アイダーダック」のように高品質のものもあります。
「アイダーダック」は極寒の地に生息しているため、ダウンボールの保温力も高いのです。かつ、この鳥は特別保護対象の「野鳥」のため、ダウンの採取には「巣に残った羽毛を集める」という方法が採用されていて、手間や希少価値も加わり「高級品」とされています。

しかし、世の中に出回っているダックダウンのほとんどは中国産の家禽(かきん)で、飼育のしやすさや食用としての転用用途もあり、グースダウンに比べて安価です。そのため、安価なダウンにはこのダックダウンが使われていることが多いようです。

ただし、ダックダウンの方が弾力性があるので結露に強く、極寒の地で長期間使用するような探検家やアウトドア用品には、ダックダウンの方が向いているとも言われています。
安価だからといって、「悪い」というわけではないのですね。

グースダウンには「ホワイトグース」と少しコシの強い「シルバーグース」がありますが、品質面ではその差はほとんどないと言われており、いずれも良質で大きなダウンボールが採取されます。

欧州産のグースダウンが全体的に高品質と言われており、その中でも比較的寒いハンガリー、ポーランド、フランス産のものが「プレミアムダウン」として高級ブランドのダウンジャケットに使用されています。
有名なハンガリーの「ラダニー(ホワイトマザーグース)ダウン」は、「マザーグース」と呼ばれる繁殖用の「親」として選ばれた、健康で優れた体格のグースから採取された大きなダウンボールを使用しているため、その暖かさは格別だそうです。

ダウンジャケットなどのタグの表示を見ると、「ダウン(down)」の他に「フェザー(feather)」が入っているものがほとんどだと思います。
ダウンの採取量が少なく貴重だからフェザーで補充する、ということもあるのだと思いますが、実はこの2種類を混合する「機能的理由」があるのです。

まずフェザーは、中心に羽軸があり、一般的に「鳥の羽根」とイメージされている形のものです。
羽軸に弾力性があるため通気性に優れており、また、型崩れを防ぐ目的でダウンジャケットや枕などの中綿として利用されます。

フェザーも、翼の羽根なども含む大きめの「ラージフェザー」と翼以外の体毛部分から採取される小さめの「スモールフェザー」の2種類に大きく分類されます。
「スモールフェザー」は、芯の部分となる羽軸が柔らかく、少し湾曲して弾力性が高いので、ふんわりとした質感と高い耐久性を得ることができ、「良質」とされています。
安価なダウンジャケットや羽根布団などでは、「ラージフェザー」の比率が高いものがあり、触ると少しガサガサしているので、購入する際にはできるだけ触感を確かめることをお勧めします。

つまりダウンにフェザーが混合されるのは、ダウンの「保温性」にフェザーの「弾力性」や「通気性」などの機能を足して、より高品質なものにするためだったのです。

品質表示には「ダウン◯%、フェザー◯%」と、それぞれの重量の割合が明記されていると思います。
保温性の高いダウンの比率が多いほど「暖かい」といえますが、ダウンが100%だと通気性が悪く、型崩れするため、ダウンの割合は90%が限界だと言われており、一般的にはダウン70~90%、フェザー10~30%の割合が「ちょうど良い」とされているようです。

また、布団ではダウンが50%以上のものを「羽毛布団」、フェザーが50%以上のものを「羽根布団」と呼び分けていますが、最近特に通販などでは、紛らわしい表現のものも多く見かけます。呼称などに惑わされず、ダウンの割合などがきちんと明記されているものを選びましょう。

保温性の高いダウンですが、その暖かさに「単位」があるのは知っていましたか?

ダウンジャケットなどダウン使用の商品を購入する際、「FP(フィルパワー)900の高品質ダウンを使用」というようなコピーを見かけることがあります。この「フィルパワー(記号:FP)」という単位は、欧米諸国のIDFB(国際ダウン&フェザー事務局)が用いている国際的単位です。

同じ量(重さ)のダウンでも、膨らみ具合(かさ高)が異なりますよね。膨らみ具合が大きいほど空気を含んで逃がさないため、保温性に優れ、暖かく良質なダウンといえます。
それを数値化したものが「フィルパワー」で、1オンス(約28.35g)のダウンをシリンダーに入れ、一定荷重を掛けた時の膨らみ具合を立法インチ(1in3=2.54cm3)で示します。例えば「900フィルパワー」は、1オンスのダウンが900立法インチの体積に膨らんでいることになります。

一般的に、FP500以下は低品質ダウンであり、FP600~700が良質ダウン、FP700以上は高品質ダウン(登山ウェアなどで使用)と認識されています。
ダックダウンはFP760までが限界と言われており、一方グースダウンはFP800以上の高い値を出すことが可能だそうです。
フィルパワーの数値が高いと、中綿として詰め込むダウンの量が少量で済むため、暖かい上に軽くなるので、防寒着としては大きなメリットですね。

日本では従来独自の単位を使用していましたが、特に羽毛布団の暖かさについて、2012年4月以降は「フィルパワー」に換算しやすい「ダウンパワー(記号:dp)」という単位を使用しています。(日本羽毛製品協同組合)
ダウンパワーは、ダウンの膨らみ具合を1g当りの体積(cm3/g)で表す単位です。日本の消費者にとっては、こちらの方がダウンのボリューム感をイメージしやすいですね。

「ダウン」のこと、だいぶわかってきましたね。

「良質なダウン」とは、ざっくり言うと「保温性」「通気性」「形状維持」に優れているものですが、「保温性」は採取する水鳥の種類によって異なりました。一般的には「グース」の方が「ダック」より暖かいですし、その「グース」の中でも生息地や種類によって保温性が異なります。
そしてその暖かさは、「フィルパワー」「ダウンパワー」といった単位で表すことができます。
また、「通気性」と「形状維持」を保つために、ダウンの他にフェザーを、商品に必要な機能バランスで配合していることもわかりました。

「ダウン」は思った以上に奥深いようです。
次回は、ファッションとしての「ダウン」を、「ダウンジャケット」を中心にみていきたいと思います。お楽しみに。

文/佐藤 かやの(フリーライター)

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