ファッション豆知識

色(1)

春になると、街も自然界も色であふれて華やぎますね。

「色」はファッションのもっとも大切な要素。
英語だと「colour/color(カラー)」、フランス語ですと「couleur(クルール)」と言います。

ファッションにおけるコーディネートは、アイテムのコーディネートであるとともに、色のコーディネートでもあります。
アイテムの形や材質が同じでも、色が変わるだけで大きく印象が変わりますよね。
同じ形のジーンズに同じ形のTシャツというシンプルなアイテムのコーディネートでも、ジーンズとTシャツの色の組みあわせで、まったく違った雰囲気になります。
例えば定番のブルージーンズに白いTシャツだと爽やかなイメージですが、ブラックジーンズに黒いTシャツになると、とたんにロックバンドや舞台の裏方さんのイメージになったりしませんか?

「服飾は空間の美術であり、視覚の美術である」
と下の「新・田中千代服飾事典」にもありますが、「色」は「視覚」における美術的要素の大半を占めるだけに、配色はファッションの美をつくる重要なポイントです。
デザインの世界では、美しさを生み出す配色の「センス」だけでなく、色から感じられる「あたたかさ」や「冷たさ」、「激しさ」や「穏やかさ」などといった心理的、生理的な作用や効果をも考えて、色を配置していくことも必要です。
ですから、ファッションのみならず、建築、グラフィックなども含めて「デザインの道」を志す人ならば、その色の持つ作用や効果、性質を「知識」として体系的に把握しなければなりません。

いろ

色は、シルエットとともに服飾におけるもっとも重要な要素の一つである。服飾は空間の美術であり、視覚の美術である。造形的な美しさやふんい気を生み出すドレスのシルエットは、面と、これを分割するいく本かの線とによって構成されるが、色がこれらの一つ一つとより適切に組合わされたとき、そしてより適切な素材のうえに生かされたとき、はじめて服飾の色としての完成がある。それゆえ色のとりあつかいにあたっては、体系的な考え方にもとづいての色の把握が必要となってくる。色のもつ作用、効果、性質、たとえば色が目にあたえる感じとしてのあたたかさ、冷たさ、はで、地味、動、静などのものをたんに感じとしてより以上に、整理された知識として心得ておく必要がある。

<後略>

解説:「新・田中千代服飾事典」より

さて、「色」を体系的に把握する、とはどういうことでしょう。

まず「色」を科学的に説明すると、人間は「色覚」という「視覚」のひとつである機能で「色」を見分けています。「色覚」は、目の網膜の中心にある「錐体(すいたい)」が光に刺激されて感じる知覚です。
感覚的には、物体自体にそれぞれ固有の色があるように思えますが、これは物体に光が当たった時に、その物体に特有の波長の光のみを吸収し、吸収されずに反射した光が「色」として見えているのだそう。

つまり、光の波長の長さによって異なった「色」が人の目で認識されているのですが、この認識される「色」はいくつかの「色み」に分けられます。
「七色の虹」とよく言いますが、この虹で見られる色は、波長が長い順で「赤」→「橙」→「黄」→「緑」→「青」→「藍」→「紫」という7つの「色み」を指します。「光のスペクトル」とも言いますね。
この「色み」は学問的には「色相(しきそう)」と呼ばれています。

また、物体の「色」は、この「色み」をもたない白、灰、黒などの「無彩色」と、「色み」をもつ「有彩色」に大別されます。
そして、この「無彩色」と「有彩色」含めてすべての色は、「色の三属性」といわれる要素を基に、分析的に体系づくられています。

「色の三属性」とは、先ほど登場した「色相(しきそう)」に加えて、「明度(めいど)」、「彩度(さいど)」という色の基本的な属性を指します。

「明度」は色の明るさ、「彩度」は色の鮮やかさの度合いを表します。
最近ですと、スマホで撮影した写真画像を加工する機能が発達しているので、そこに「明度」や「彩度」という言葉を見かけることがあるのではないでしょうか?明度や彩度を少しずつ上げたり下げたりして調整すると、感覚的にその効果をつかむことができますね。

「有彩色」は「色相」「明度」「彩度」のすべての属性を持ちますが、「無彩色」は色みが無いため、「色相」と「彩度」の属性はなく、「明度」しかありません。つまり、明度が一番明るい「白」から一番暗い「黒」まで下げていくと、その中間で表れるのが様々な濃さの「灰色」なのです。

この「色相」を体系的に円に配置したものが「色相環(しきそうかん)」です。円形の虹のようなチャートで、色を選ぶ際に使われます。

また、色の三属性は互いに独立した性質のため、どれか1つが変化しても他の2つは影響を受けません。そのため色の世界は、「色相」「明度」「彩度」の三属性の位置づけで、三次元で表すことができます。
つまり、有彩色はこの三属性によって立体上の位置が決まり、反対に、色が立体上のどこにあるかを見れば、その色の「色相」「明度」「彩度」が分かるようになっています。

このような、色を体系的に示した立体を「色立体(いろりったい)」と呼び、「色相環」よりも細分化したチャートとして利用されています。
一般的には「マンセル色立体」という「マンセル表色系」に基づいたものが、広く使われているようです。

いろ

<前略>

すなわち色の三属性、つまり明度(色の明暗)、彩度(あざやかさの度合い)、色相(色を他の色と区別しうる色味)にしたがい分析的に色をとらえる、また色環や色立体によって色彩の系統的配列に関しての知識や配色についての基礎を学ぶ、あるいは色の表情、象徴、連想といった色彩の心理についての理解を深めるなどのことが必要である。

<後略>

解説:「新・田中千代服飾事典」より

「表色系(顕色系)」とは「色の表わし方」のことで、色を「記号」や「数字」で色を表すことによって、感覚的ではなく、より正確に色を伝えることができるカラー・オーダー・システムです。

私たちが日常使っている色名は、「赤」や「青」、「橙(だいだい)」や「黄緑」などといった「分類色名」と「小豆(あずき)色」「栗色」「若葉色」などのような動植物や染料などの名称から名付けられた「慣用色名(固有色名)」がありますが、いずれも個人の感覚的な要素が多いため、人に伝えると、自分のイメージしている色と人のイメージした色は、必ずしも一致しないことが多いと思います。

そういったズレは、色を正確に表示しなければならない職業デザインの現場では、致命的なミスになることもあります。
誤認を防ぎ、自分のイメージした色を正確に伝えるコミュニケーションツールとして、科学的に色を分類した表色系が用いられているのです。

現在多く用いられる表色系としては、「マンセル表色系」、「オストワルトの表色系」、「CLE方式」、「日本色彩研究所方式」などがありますが、最も多く使われているのは「マンセル表色系」でしょう。
「マンセル表色系」は、アメリカの美術教育者で画家でもあったAlbert Henry Munsell(アルバート・ヘンリー・マンセル)によって1905年に考案された、色の三属性によって物体色を表示する典型的な表色体系です。

マンセルの表色システムにしたがって系統的に色を配列した標準となる色見本(色票集)「The Munsell Book of Color」には約1600色が収められています。
日本工業規格(JIS)の「JIS標準色票」には、このマンセル表色系のものに日本独自の色を追加した約2140色が収蔵されており、国内のデザインの現場でも広く活用されています。

私たちは色から、「あたたかさ」や「冷たさ」、「激しさ」や「穏やかさ」などといった心理的、生理的な作用や何かを連想させるような効果を感じます。
例えば暖色系の色からは文字通り「あたたかさ」を感じますし、寒色系の色からは「冷たさ」を感じます。「赤い手袋」の方が「青い手袋」よりもあたたかく見えますし、反対に青いクーラーバッグの方が赤いクーラーバッグよりも冷えそうですよね。

暖色系の「赤」でも、濃さのある「真紅(しんく)」だと、「あたたかさ」よりも「情熱」や「激しさ」をも感じさせるかもしれません。
また、色のイメージは、個人的な経験や記憶の影響も受けることがあります。
「真紅のドレスをいつも着用していた心の冷たい貴婦人」といったようなイメージを持つ人は、真紅から「冷たさ」を感じてしまうかもしれませんね。

さらに色単体ではなく、組み合わせによって引き起こされる色の心理的効果もあります。

色相環の反対側に位置する2色を「補色」と呼びます。一般的には「反対色」と言った方が馴染みがあるかもしれません。例えば「赤」と「緑」、「青」と「橙」といった組み合わせです。
補色配色は、「穏やかな」気持ちにはなりにくいでしょう。

補色は色相差が最も大きいので、お互いの色を目立たせる効果があります。そのため「目立つ」という目的のデザインでよく使われます。
ただし、補色同士をそのまま合わせると、コントラストが強すぎてハレーションが起こってしまうので、白など薄い色を上手に組み合わせて使います。
補色を効果的に配色しているコンビニエンス・ストアの看板などは、雑踏の中にあっても目立ちますよね。また、目立たせたいPOPなどでもよく見られます。

反対に同系色でまとめると、少しほっとします。

このように色のもつ心理的作用や視覚効果を活用して、「目的」を実現するデザインをするためには、色彩の系統的配列に関しての知識や配色についての基礎を学ぶことが、ファッションデザイナーのみならず、デザインに関わる人たちにとって求められるのです。

色の話は、“色々”話の種が尽きませんので、次回に続きます…悪しからず。

文/佐藤 かやの(フリーライター)

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