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ファッション豆知識

ブーツ

朝晩、冷え込むようになりました。
健康を維持するためには、まず身体を冷やさないことが大事、と言われていますが、効率的に身体を温めるには、「首」「手首」「足首」の3つの「首」を冷やさないようにすると良いでしょう。

特に心臓から一番遠い足先は冷えやすく、冷たい足に悩んでいる「冷え症」の人も多いかもしれません。
「足首」を冷やさないようにするのに靴下は欠かせませんが、手っ取り早いのは靴を、足首周りをカバーする「ブーツ」にすることでしょう。

通常、丈がくるぶしより上の履物を全般的に「ブーツ(boots)」と呼び、くるぶしより下の「スリッパ(slipper)」と区別されています。

ブーツBoots

<深靴>のことで、短靴のシューズ(shoes)に対する語。通常くるぶしより上の長さをもつ靴をブーツとよんで、シューズと区別する。長さはさまざまで、くるぶしまでのもの、ふくらはぎまでのもの、膝までのもの、ストッキングのように太ももまであるものなどがある。材料はゴム、皮、エナメルなどが主で、雨靴、作業靴のような実用一点ばりのものと、そうでないものとがある。

解説:「新・田中千代服飾事典」より

アメリカとイギリスとでは、「シューズ」の概念が多少異なるそうで、アメリカでは深靴である「ブーツ」も「シューズ」のうちとされ、短靴のことを「ロー・シューズ(low shoes)といって区別していて、イギリスではかかとより上に出ない靴を「シューズ」といっていたようです。しかし最近はアメリカでも、短靴全般を「シューズ」と呼んでいるそうです。

「シューズ」の項より(2)ブーツBoots

シューズ(短靴)に比べて深靴のことをいう。アメリカとイギリスとでは、多少異なった概念をもっている。アメリカではふくらはぎをおおう物、またはそれ以上の長さのものをいうが、イギリスでは短靴(くるぶしへんのもの)やスリッパなどに比べて長い靴のことをブーツとよんでいる。しかしいずれにしてもくるぶしより上にでるものはすべてブーツである。フランス語ではボットゥ(botte)という。

解説:「新・田中千代服飾事典」より

ブーツは大きく「丈」「素材」「用途」の3つに分けられますが、便利でファッション性も高く、世界中の多くの人びとに愛用されたため、本当に多くの種類のブーツがあります。

「丈」の短いものから挙げてみると、

デミ・ブーツ
- かかとを覆うか覆わないか程度の丈のもの。ローカットのワラビーブーツなど
アンクル・ブーツ(ブーティ)
- 踝が隠れる丈のもの。チャッカブーツ、デザートブーツなど
ショート・ブーツ
- 踝より上の足首が若干隠れる丈のもの。ジョージブーツ、ジョッパーブーツなど
ハーフ・ブーツ
- 下腿部の半分程度を隠せる丈のもの。カウボーイ・ブーツなど
ロング・ブーツ
- 膝下あたりまで隠せる丈のもの。ライディングブーツなど。日本でよく見かける主流タイプ
スーパー・ロング・ブーツ
- 膝より上まで隠せるもので膝上〜股下までの長さによりオーバー・ニー・ブーツ、サイ・ハイ・ブーツ(タイ・ハイ・ブーツ)、クロッチ・ブーツ、ニー・ハイ・ブーツなど

と「丈」だけでも細かく分かれています。
それだけ少しの「丈」の差で、印象が変わるとも言えます。

一般的にアンクル・ブーツ (足首をおおう程度のもの)、ハーフ・ブーツ(半長靴)、ハイ・ブーツなどと<丈>によって名称づけられている。一番長いものが、タイツ・ブーツやストッキング・ブーツといわれるもので、柔らかい革、合成繊維などでつくられ、足にぴったりついたストッキングふうのものである。そのほか乗馬に用いる長いブーツ、釣(つり)用などの腰まであるヒップ・ブーツ、カウボーイなどのカウボーイ・ブーツ、雨用のレイン・ブーツ、上部の幅の広いジョッキ・ブーツなどがある。

解説:「新・田中千代服飾事典」より

女性用のくるぶし丈のアンクル・ブーツを「ブーティー」と呼び、日本の女性の間でも人気があります。今ではすっかり秋冬の女性ファッションの定番アイテムとなっていますが、実は「ブーティー」という言葉の幼児性からもうかがわれるように、子供用のものも含まれます。

また、今年は長めのロング・ブーツが流行アイテムです。

日本では「ロング・ブーツ」と呼ぶのが一般ですが、英語では「高さ」をいみする「ハイ(high)」を使います。膝上まであるものは、「ニー・ハイ・ブーツ」と呼ばれていますね。
今年の冬は久しぶりに、この「ニー・ハイ・ブーツ」も街で見かけることでしょう。

ブーティーBootee

小さなかかとなどがついている、女らしい感じの短かめのブーツで、くるぶしをおおう程度の軽い婦人、子ども用の編み上げ靴。または小児用の毛糸の靴のことである。また脇に伸縮自由のゴムの襠(まち)のはいった男子用の半長靴のこともいう。

解説:「新・田中千代服飾事典」より

ニー・ハイ・ブーツKnee-high boots

膝まである丈の高いブーツのこと。1966~1967年ごろミニスカートがとくに短かったときに多くはかれた。型はいろいろあり、内側に着脱のためにファスナーのついたものや、冬は毛皮やウールの裏がついたもの、また春夏にはところどころにオープニングやボウなどのついた涼しげな軽快なものなども多い。材料も毛皮や革、エナメルあるいはプラスティックや布地を加えたものなど種々ある。

解説:「新・田中千代服飾事典」より

「ブーツ」の歴史は、紀元前からとか中世のゲルマン人であるとか、東アジアの遊牧民であるとか、様々な説があります。

元々はサンダル状もしくはスリッポン状の短い靴の上から、足を保護する「レギンス」などを組み合わせて履かれていたものが結合して深靴ができたようです。(ここでの「レギンス」は今日本で認識されているものとは異なるのですが、その辺はぜひ「レギンス」の回を参照くださいね)

狩猟民族のゲルマン人も遊牧民族と同様、定住せず大移動をして生活をしていたことから考えると、多くの民族にとって、足の保護・耐水・防寒となる足首を覆う深靴が必要不可欠なものだったのでしょう。
つまりその歴史は、どこかで発祥して広まったというより、人間の移動のあるところに多発的に発生したため、多くの説があるのだと思います。

足場の悪いところや寒いところの活動に欠かせないのが「ブーツ」。
登山や釣り、乗馬などで履かれており、それらがスポーツとなった欧州では、その流れでスポーツ用としても発展しました。
乗馬ブーツには、ブリティッシュ・スタイルのものや日本では一般的に「ウェスタン・ブーツ」と呼ばれるアメリカの「カウボーイ・ブーツ」がありますが、それらは今ではファッション・ブーツとして女性にも愛用されています。
また、兵士も元々は馬に乗っていたことから、軍靴としてもブーツは履かれてきました。

元来ブーツは、乗馬や<つり>などの特別のスポーツのほか、雨や雪や道が悪いときなどに機能的な意味から用いられた靴であったが、近年女性の間では防寒の役割とともにスカート丈が短くなるにしたがい、脚の露出部分がひじょうに多くなり、全体のプロポーションのつりあい上、あるいは服のアクセサリーとして、装いの中の大きな役目を果たすようになっている。

解説:「新・田中千代服飾事典」より

初めは機能靴として愛用されていたブーツも、やがてファッション靴として広まると、様々な素材、柄、デザインのものが展開されました。

最近、「ドクター・マーチン」のような「ワーク・ブーツ」や「エンジニア・ブーツ」もファッションアイテムとして再流行しています。
これらも元は労働者が履いた機能靴でしたが、そこに不良性や反骨性が付加され、特にイギリスの音楽をはじめとしたカルチャーシーンでは、ストリート・ファッションの定番靴として愛用されました。ちなみに、「ラバーソール」と呼ばれた日本のロック・ミュージシャンも多く履いていた靴がありましたが、「ラバーソール」というのは和製英語で、本来は「ブローセル・クリーパーズ(brothel creepers)」という商品名で、なんと「売春街をこっそり歩く人」という意味なのだそう。

ブーツの材料は、革、エナメル、ゴム、防水布、毛皮などがあり、金、銀、ビーズ、刺繍をほどこしたものなども多い。 またとめ具のないもの、ファスナーが前、後ろ、横いずれかについて足にぴったりしたもの、編み上げのもの、折り返しや、ボウのついたものなど各種ある。子馬の皮でできたしゃれたものはボニー・ブーツ、フラノでつくったものは、フラノブーツ、タータン・ブレードのものはタータン・ブーツなどとよばれている。

解説:「新・田中千代服飾事典」より

そして日本で初めてブーツを履いた、と言われているのは、なんとあの坂本龍馬だとも言われています。残っている彼の写真の足に履かれていたのが、「サイドゴア・ブーツ」という履き口の両サイドに伸縮性のあるゴアが施されたショート・ブーツだったのです。
一説によると、彼にブーツを与えたのは、長崎の「グラバー邸」で有名なトーマス・ブレーク・グラバー(Thomas Blake Glover)だとも言われています。龍馬の設立した商社の「亀山社中」は、グラバーの「グラバー商会」と取引関係にあり、武器をはじめとして西欧の物品を輸入していましたので、西欧のファッションを取り入れるのも早かったと思われます。
「改革者」である龍馬は、当時のファッション・リーダーでもあったのかもしれませんね。

そういえば、クリスマスにやって来るあのおじいさんも、足元は黒いブーツでした。
クリスマスといえば、お菓子がつまった赤いブーツを見ると、なんだか幸せな気分になります。
温かなブーツで、心も温かになりますように。

文/佐藤 かやの(フリーライター)

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